笑ミステリー 『女王様からのミッション』
「京都は一千年の都ですが、それ以前から現在まで、邪馬台国は祇園の地下に女王国を築いてきたのです。縄文/弥生/平城/平安/室町/戦国/江戸/明治と、今までのいつの時代も、卑弥呼をめぐる男やちの熱い戦いがありました。我こそはと地方からこの京の祇園を目指し、卑弥呼のボーイフレンドになるために上ってきたのです。そういった男たちの卑弥呼への恋の戦い、それこそがまさに、日本の歴史そのものなのですよ」
「ふーん、そうなんだ」
高見沢は卑弥呼女王のお話しに、ただただ感心せざるを得ない。
「例えば、織田信長、彼は第五一代卑弥呼にぞっこんだったのですよ。それで日本統一を果たし、日本国をプレゼントするつもりだったようですが、本能寺で光秀に殺されてしまいましたよね。だけど遺体は見付かっていない。それもそのはず、真実は本能寺から地下道を逃げ、この地下女王国に逃げ込み、最終的に第五一代卑弥呼とともに、表舞台には出ず、この地下女王国でひっそりと暮らしたのですよ」
「ふうん、そうなんですか」と高見沢はただただ頷くだけ。
「また明治維新の時も、みなさんかなりお盛んだったのですよ。土方歳三さんはハンサム、桂小五郎さんはロマンチスト、近藤勇さんはワイルドと役者揃いでしたわ」
「へーえ、明治維新の時もね、そういうものだったのですか」
「だけど、最近はあまりこれという男はいませんしね、私は邪馬台国の種の保存の責務を果たして行かなければなりません。お陰様で、邪馬台国はバイオが進んでいますので、遺伝子の組み替えも行いながら、第六八代卑弥呼を創造したいと思っています」
「それはそれは大変ですね、微力ながらサポートさせてもらいますよ」
高見沢は珍しくまともなことを言う。
「高見沢様は、太陽系外種の我が邪馬台国民族とかなり近親にあると報告を受けています。その上に、その燻(いぶ)し銀のような魂まで、ピュアなララ嬢にコピーさせて頂きまして、まことに感謝しておりますのよ」
高見沢は卑弥呼女王に目一杯持ち上げられた。そして男心の琴線、そこへぐさっと最後の止めを刺し込まれてしまうのだ。
「高見沢様って……、心は本当に、イケメンなんですね」
高見沢はそんな卑弥呼女王のヨイショ話しに嬉しくなってしまい、「私の魂、つまらないモノですが、ご自由に御活用下さい。そして必要なら、なんなりと御用命下さい」と、もう人生を預けてしまったような発言をしてしまうのだ。
そして、あらためて卑弥呼女王をじっと見つめ直してみる。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊