笑ミステリー 『女王様からのミッション』
「えっ! ホント?」
高見沢はしばらくして遂に見付けたのだ。大きな集合ボードの下の方に、〈邪馬台国入口〉と表示されてある。高見沢はカーナビの出来事は冗談半分だと思っていたこともあり、実際見付けてみて、びっくり仰天で目を丸くする。
「しかしなあ、そこへ入って行くには、ちょっと勇気が要るよなあ」
高見沢は少しビビリ出した。そしてポケットにある財布を、ズボンの上から撫でてみる。
「で、一体、お金はいくらぐらい持ってたら良いのかなあ。まあ、いざとなれば、カードで支払おうか。そうだ、問題な〜し!」
そんな事を口にして、自分を強制的に鼓舞させる。それはまるで取って付けた勇気凛々。
その後思い切って、ビルの脇にある細い階段を地下三階まで下りて行った。
途中怖くなり引き返したくもなったが、「へへへ〜い♪、僕たち男の子 〜〜♪」と、まだ残っている酒の勢いにまかせて、さらに突き進んで行ったのだった。
そして辿り着いた所、そこにはいかにも重たそうなドアがあった。そこには……〈邪馬台国 : メンバー制〉、そんな看板が掲げられていた。
「この不景気の時代に、メンバー制とは生意気な。しかし、こっちも今まで悪い事をした人間じゃないし、必要なら入ってからメンバーになれば良いんだよ」
高見沢はこう言い放ってみたものの、もう一つドアを押し込む決心が付かず、ドアの前で狼狽(うろた)えながらオロオロとするだけだった。
そんな時に、ドア・スピーカーから甘い声が……。
「高見沢様、中へ、どうぞお入り下さい」
そう告げてきて、そのドアが音もなく開く。そして繰り返し、「お気楽に、どうぞ」と。
高見沢はその声に誘われて、吸い込まれるようにして中へ入って行ってしまった。
作品名:笑ミステリー 『女王様からのミッション』 作家名:鮎風 遊