小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

「夢の続き」 第十四章 岡山

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

船を扱う仕事をやっていてな、戦争が始まると忙しくなったそうじゃ。わしも子供の頃は父親の顔は見なんだからのう」
「そうでしたか・・・真一郎おじいちゃんは父親が銀行の頭取だったと聞いています。今の深川の家も小さくはなりましたが
空襲で焼ける前は広大な屋敷だったとおばあちゃんは話してくれました」
「なるほど、戦争が終わって金持ちは家や土地を失い、貧乏人は命を失ったということか・・・切ないのう」
「はい、俺はお金には余り執着はありません。その辺は洋子に全て任せます。贅沢をしたいと思ったことは無いんです。
まあ、母がお金はいつでもくれたので、当たり前にしていたことも理由ですが考えたら甘えていたことになるんですよね」
「おお、なかなかしっかりものじゃの。そう思えるだけで立派じゃ。貴史くんがここに来てくれたら寝るところと食べるものと
学校の行き帰りの費用はわしが負担する。その代わり、アルバイトでもして洋子さんと遊びに行くお金や買い物をする
お金は稼ぎなさい。洋子さんも家でじっとしているのではなく働くのもいいぞ。いろんなことが勉強できるからのう」
「なんかもう決まっているような気持ちになってきました・・・洋子は本当にいいのか?」
「父と母が反対しても貴史が来るなら着いて行く」
「そうか・・・東京に帰ったら親に相談してみるよ」
「貴史くん、決まりじゃのう!嬉しいわい」

勇介は話した甲斐があったと大喜びした。妻と二人暮しは侘しく感じていたから本当に心から嬉しさがこみ上げてきた。
ハンカチを取り出して零れそうになる涙を拭った。

「今からおじいちゃんと呼ばせてもらいます。構いませんか?」
「ええぞ、そう呼んでくれ。いずれ本当にそうなるんじゃからのう。洋子さんも呼んでくだされな」
「はい、おじいちゃん」
「もう直ぐ着くぞ・・・そこ曲がって少し上れば」

痛い腰をかばいながら勇介の妻は玄関先に出てみんなを待ち構えていた。
「いらっしゃい。首を長ごうして待っとりましたよ」
「家のばあさんじゃ。新しく出来た家族の由美さんと洋子さん、こっちはいつも話しておる貴史くんじゃ」
「家内の夏枝と言います。あなたが修司のお嫁さんなのね。綺麗な方ね・・・洋子さんも可愛くてらっしゃる。
恭子とは仲良く出来そうで本当に良かったわ。貴史さんの事は毎日のようにおじいさんから聞かされていますよ。よっぽど
気に入っている様子です」
「本当ですか?おじいちゃん、何を話していたんですか?」
「タクシーの中で話しておった事じゃよ」
「なるほど・・・」
修司が口を挟んだ。

「何を話していたんだ?貴史」
「後で話すよ」
「まあまあ、まずは上がってゆっくりしなさい」夏枝にそう促されて荷物を置いて土間にみんなが集まってお茶をしていた。
囲炉裏火は赤々と燃え盛り、吊られている南部鉄の鉄瓶からは蒸気がたち込めていた。

「お茶が美味しいですね」由美はびっくりした。
「そうじゃろ。この鉄瓶で煎れると美味さが違うんじゃ」
「そうでしたか・・・都会に住んでいるとこうした自然のことが忘れられてしまいますね」
「うん、由美さんそうじゃぞ。ついでに話してしまうが、さっき貴史くんには聞いてもらったが、こちらに洋子さんと二人
で暮らすこと承知して下さらんか?」
「初めて聞きますよ、そのお話は・・・」
「初めて言うんじゃからそうじゃろ。こちらの岡山大学に貴史くんが合格してくれれば、ここから通わせてやりたいと
思うんじゃ。そして洋子さんも一緒に住んだらええ。もう二人は子供を作って育てても構わんと思うておる」
「そんな・・・あなたどう思われます?」
修司は複雑な表情を見せて、由美が考えていることと違う返答をした。