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「姐ご」 10~12

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「姐ご」(12) 
負けずの魂


 「大丈夫ですか、アニキ!」



 装蹄師が、おっとり刀でやって来ました。
どうやら練習場での一件を聴きつけて、それであわてて駆けつけて来たようです。
あの若いのには後できっちり言っておきますからと
やたらと力をこめて喋りだします。



 「可哀想なことをするんじゃねぇぞ。
 やつのせいじゃねえ言うことを利かない、俺の左手が悪いせいだ。
 それよりもおめぇに、折り入っての頼みがある。
 聞いてくれるか?」




 「えっ、そりゃあもう
 兄貴の頼みとあらば、いつでも喜んで生命以外は差し上げます。
 アニキが行けといえば、例え火の中、水の中、
 どこでも行ってきやす!」



 「そんな大げさなもんじゃぁねえ、
 ちょっと耳を貸せ」



 瓦屋が、装蹄師に事細かに耳打ちをします。
すまねえアニキ、もう一度お願いしますと、今度は
装蹄師がメモを取りはじめました。
「へいへい」とうなずきながら一通りのメモをとりきると、
装蹄師が早速、買い物に走ります。



 「悪いな、礼は弾むから頼んだぜ!」


 「兄貴、水くせえことは言いっこなしだ。
 万事まかせてください。
 こう見えてもやる時は、とことんやるタイプですから、
 真剣に買い物に行ってきやす。
 もう準備なら、バッチリです。」



 「ほんとうか、女だけだろう?
 お前が真剣に『やる』ときは・・・」



 「アニキ、茶化しちゃいけねえや。
 じゃあ、ちょっくらかき集めてきますんで」



 そう言い残して、装蹄師が飛び出していきました。
じゃあ俺は、右手一本でできることの片づけでもするかと
瓦屋も立ち上がります。
玄関を出ると、しばらく使っていない物置へと向かいました。



 物置とはいえ、間口は4間、奥行きが2間もある
仕事用の資材置き場です。
広さ的には充分だが、問題は照明だなと、うす暗い天井を見上げて
瓦屋がつぶやきます。
物置の内部には、ぐるりと見渡しても、それほど資材が
残っているわけでもありません。



作品名:「姐ご」 10~12 作家名:落合順平