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「姐ご」 10~12

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 バブル全盛のころには、ここには収まりきれないほどの瓦が
積み上げられていたのですが、最近ではごく片隅でも
間にあうほどの仕事量です。
良く運搬に使っていた2トンのトラックも、
今では埃を被ったままでした。



 「軽トラックで間にあうこのご時世じゃ、
 食うに食えないってか・・・」



 それぞれのシャッターを開けて開放をすると
物置一面に、初夏の温かい日差しが隅々にまで射しこみました。
腕の良い瓦職人を支えてきた仕事場が、今その最後を迎えようとしています。
おめえたちにも、ずいぶんと世話になったなぁ・・・と、
道具の一つ一つを手に取って、瓦屋が懐かしく眺めています。

そこへ・・・・



 「アニキ、早まったら・・いけねえ!」



 装蹄師がすっ飛んできました。
瓦屋が、雑草退治用の大きな鎌を手にしている時のことでした。
装蹄師があわてて瓦屋の右手から、鎌をもぎ取ります。



 「何勘違いしてんだ、おめえは。
 今年はこの手じゃ草退治も大変だから、
 鎌はやめて、除草剤にしょうかと考えていたところだ。
 俺が自殺するとでも思ったか?
 たかがゴルフができねえくらいで、死んでたまるかよ。
 死ぬ前にまだ、こうしてやることが有るからこそ、
 こうしてお前を呼んだんだ。
 おう、そっちを持ってくれ」



 とりあえず、大きな材料などをを表に出し始めました。
装蹄師にあっちだこっちだと指示を出しながら、
物置の大改造が始まりました。
と言っても、中に残されていた道具や材料は、
表に出された2トントラックの荷台に
次々と積み込むだけのことでした。



 小1時間もたつと、物置きはすっからかんになりました。
装蹄師が買い込んできた、
ビニールのネットを室内のすべてに貼り始めます。
窓ガラス部分には飛散防止用に、ガムテープを縦横に貼りつけて強化しました。
さらに壁の四方には大きな投光器を取り付け、それの表面もネットで
綺麗に覆います。
最後に、床のすべてに人工芝を敷き詰めました。



 「おう、シャッターを全部閉めてから、
 ちょっと電気を点けてみろ」



 装蹄師が言われた通りに動きます。
やがて投光器の強い光に浮かびあがってきたのは、
まさに、個人用のゴルフの室内練習場そのものでした。



 「うんよかろう。
 これなら、完璧だ。
 これで深夜だろうがなんだろうが、
 24時間の練習ができらあぁ
 見てろ、ここから完全復活ってやつを、やってのけるから」



 「なるほど、
 そうか!さすがにアニキだ。」



 喜び顔の装蹄師を、瓦屋がたしなめます。



 「おめえは口が軽いから、要注意だ。
 此処は俺の秘密の練習場だ。
 だれにも言っちゃいけねえぞ。
 例え無事にゴルフに復活をしても、ここの練習場のことだけは、
 俺とおめえだけの、二人だけの永遠の秘密だ。
 俺に恥をかかせたくなかったら、ず~とお口にチャックだぜ。
 なぁ、相棒。」



 「あっ、それとな~。
 表の2トントラックと積んである荷物の一切合財は、
 全部おめえにやるから好きにしろ、
 もちろんトラックもおめえのもんだ。
 駄賃だと思って持って行け、
 もう俺には、用の無いもんばかりだからよ」



 「アニキ・・・」
もう装蹄師が、泣きベソをかいています。




(13)に続く


作品名:「姐ご」 10~12 作家名:落合順平