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予感 -糸-

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ふと、思いつきで出かけた彼女は、その目的もなく歩き回った疲れを持って部屋へと帰ってきた。

昼間の日光は、ひとりでいても、気持ちを明るくさせていたが、陽ざしも傾き、その温かみも薄れつつある夕方の街をただ歩くのはなんとなく 寂しくなってくる。
小洒落たグッズの雑貨屋店も 好きなスタイルの洋服が並ぶ店も 雑誌で見つけた喫茶店も そのときだけの楽しさだけだった。
優しい彼も 忙しく仕事をしているようで 連絡もない。
我儘を言ってみようかと、携帯電話でメールを送ったけれど その返事は返ってきていなかった。
彼の代わりに 急に誘った友人も みんな それなりに用事を持っていて見つからなかった。
間が悪い時は、そんなものだと彼女も諦めたものの、陽気な陽ざしに誘われるように出かけたのだった。
 
部屋に帰った彼女は、着替える為に 人目のある窓のカーテンを閉めた。
他の窓からの薄明かりの中、コットンメッシュのセーターのポイントにつけていた皮紐のペンダントを取ろうとした。
プツッと僅かな音が耳元でした。
頭をくぐらせていないのに 革紐とペンダントヘッドの一部を掌に残し、床にも落ちる音がした。
「切れちゃった」
そのペンダントは、まだ付き合い始めた頃に彼からプレゼントされたものだった。

まだ手を握り合うのも 戸惑いというエアーボールを挟んでいるいるような感覚だった彼女に 彼が「その服に似合うよ」と路上で店を出していた手作りアクセサリーを買ってくれたのだ。
それから 彼女は、ずっと大切にしていた。

そのペンダントが切れてしまった。もちろん 徐々に磨耗はしてはいたかもしれない。
だけど、彼女は、そういうことが気になる性分。そう、何かあったかしらと予感を働かせる。

作品名:予感 -糸- 作家名:甜茶