僕の村は釣り日和5~竜山湖の事実
東海林君は高田君の目をしっかり見つめて尋ねた。
「イワナやヤマメだよ。よくニジマスも釣れるかな。けっこう釣れるんだぜ」
「よし、乗った!」
東海林君の瞳が輝いていた。
「じゃあ、八幡様の前に七時に自転車で集合な」
そう言うと高田君は駆け足で突っ走っていった。まるで逃げるように……。
僕は東海林君と渓流釣りの話をしながら帰った。
「よし、俺はルアーでイワナやヤマメを釣ってやるぞ」
東海林君が息巻く。僕の父もルアーで渓流魚を釣っているから、彼がルアーで狙いたいと思うのも当然だろう。
東海林君の足取りは軽かった。僕もつられて足取りが軽くなる。何よりも嬉しかったことは、あの高田君が素直に謝り、釣りに誘ってくれたことだった。もともと高田君と僕とはそんなに悪い仲ではない。ブラックバス問題を挟んで、ここのところ関係がギクシャクしていただけだ。父の悪口のことはもう忘れようと思った。
作品名:僕の村は釣り日和5~竜山湖の事実 作家名:栗原 峰幸