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いとこんにゃく
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誰が為にケモノ泣く。Episode01『ある少年の告白』

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 一弥は首を振った。梶の言うこと一つ一つがまるで釘を打ってくるかのように心を穿つ。梶には強い執念のようなものを感じた。梶にとって、箕雲桐生はどんな存在なのだろう、そんな想いが焦りを生む。
 黙り込んでしまった一弥を、梶はそれでも何かを待つようにじっと見つめていたが、ふいに視線を落とすと、
「ボクは、他殺なんじゃないかって思ってる。証拠なんて何一つない勝手な憶測なんだけどさ。――そっか。何も知らないのか。嫌な気分にさせちゃったらゴメンね、八クン」
「いや…大丈夫だよ。こっちこそ力になれなくてゴメン」
 一弥は一刻も早くこの場を立ち去りたかった。


「――ッ、ハァ…ハァ」
 梶と別れた一弥は、人気のないところまで移動すると、あまりの苦しさにその場にしゃがみ込んだ。またあの頭痛だ。しかし、今回の痛みは頭だけでなく身体中に影響をもたらしていた。思考が、体力が少しずつじわりじわりと奪われていく。唐突に襲ってくる痛みは以前からあったが、最近はとくに激しくなっていた。しばらく耐えていれば、自然と収まっていくのだが、今日に限って激しさは収まるどこか激しくなる一方だった。
「どうしちまったんだよ…」
 呼吸が荒い。胸が苦しい。なんだこれは?
「…くっ」
 そういえば、痛みが襲ってくるのはいつも、桐生のことを考えたときだった。
「…罰、かな。……ハッ、当然か」

 ――お前を殺したのは、俺なんだから。
 
「いつまで…隠せるかな」
 もう追っ手は目の前まで迫っている。
 梶は、本気の目をしていた。あの目は自分のことを疑っている目だった。ウソをつくのが苦手な一弥にとって、それをごまかし続けるのは至難の業だった。
「……いっそ、全部話せばラクになるのかな」
 永遠に隠し通せるものじゃないと分かってはいたが、そろそろ限界かもしれない。
 隠すことも。
 耐えることも――。
 一弥は、制服のポケットから携帯電話を取り出した。液晶画面には、昨日梶から届いたメールがそのまま表示されている。

『箕雲桐生を覚えているか?』
 
「…忘れたくたって、忘れられないんだよ」