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マーカー戦隊 サンカラーズ

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「……起きろよ。目、覚ませよ……! ふざけんな!!」
 感情のまま立ち上がり、飛び掛ると、不意をつかれたらしいホワイトがバランスを崩した。そのまま馬乗りになって胸倉を掴むが、振り払おうとするホワイトに思い切り頬を殴られる。
 けれどそれすら構う気になれなくて、紅太は掴みかかった手を無理矢理引き寄せた。
 切れた口の端から血が流れて、熱くなった頬が鈍く痛む。こんなに近くで相手を見つめても、ホワイトの中から良介の感情を見つけることができない。
「悪かったな、どうせ俺は何にも知らねぇよ! お前が小さい頃どんなだったのかも、お前がどういうつもりで俺と一緒にいたのかも! なんでみんなの記憶を全部、全部を消しちまったのかだって!!」
 紅太は何もしらない。知らないけれど、でも。
「お前、自分こと嫌いだったのかよ!?」
 良介のすべてが、消してしまいたい過去で埋まっていただなんて。
「俺は嫌だ! すぐ怒鳴るし、こうるさいし! でもいつだって他人のこと気遣って……それは、好きでそうなったんじゃないのかもしれないけど!!」
 それでも。
「人が倒れてるのに、平気な顔して見下ろしてるような……そんな、お前は……!!」
 そんな良介を紅太は知らない。知らないだけじゃない、そんな奴に一番腹を立てていたのだって良介なのに。
 なのに。
「――起きろよ! 起きろ!! 速く目ェ覚ませ! 良介!!」
 放っておくことも、見捨てることだってできたはずなのに、いつだって良介は絶対にそうしなかった。そんな良介がどうしてこんなことを望むのか――倒れていた人たちの姿が脳裏を掠める。そうなると余計に、こちらに手を差し伸べる良介の記憶が鮮明に浮かんで、紅太は歯を食いしばった。
「お前自分がどんなだったか、さっさと思い出せよ!!」
 怒鳴り声に対してか、思い切り殴られる。たまらず胸を突き飛ばすと、ホワイトの体が仰向けに倒れこんだ。
 全身から力が抜けてしまって、興奮で荒くなった息のまま紅太も地面に転がった。殴られた衝撃も相俟って、目が回った時のように頭がふわふわと浮いている。
 うまく働かない頭のまま、早く良介を起こさなければと思う。思うのに、体が動かなくて紅太は焦った。
 不意にホワイトの体が白く光りだす。そして体から弾かれるように光が飛び出したかと思うと、光はスライムのようにまとまって女の体を形作った。
 光が消えたホワイトの体は良介の姿に戻っていて、呆然と見守る紅太の前で瞼がわずかに痙攣する。
「……良介……?」
 そのままゆっくりと瞼が開き、紅太に焦点を定めると眩しそうに目元を歪めた。
「こう、た……?」
「良介……!!」
 ようやく目を覚ました良介は、安堵に目を見開いた紅太の様子を不思議そうに眺める。
「なんだ、一体……ブラック?」
 そうして一通り紅太の状態を確認して、良介は視線を巡らせた。ほぼ全壊の校舎と町の様子に眉をひそめ、肩を竦めてこちらを見下ろすブラックに目を見開く。
「え? ルーナ、なんでお前変身して……?」
〈藍川くん!!〉
「……関口?」
 そしてブラックから発せられた、頭の中に直接響いた声。その耳に馴染んだ高い声に、良介が思い切り顔を引きつらせる。
「……オイ、まさか……」
 しかしそんな良介の様子に気付かない紅太は、良介の意識が戻った喜びのまま勢いよく飛びついた。
「良介、よかった! 意識が戻っ――」
「バカ紅太! お前関口になにさせてんだ、危ないだろーがっ!!」
「痛ってぇ! なんだよ、お前のせいじゃんかぁ!!」
 そして半泣きの紅太の訴えに、我に返った良介が明らかにしまったといった風で肩を竦めた。
〈藍川くん……〉
「良介……お前な。さすがにそりゃねーよ」
「今回に関しては紅太の言うとおりだ。お前が文句を言う権利はない」
「ぐっ……」
 周囲から一度に攻められても、残念ながら良介に反論できるだけの材料はない。全方向からの冷たい視線が良介の体に刺さる。
しかしルーナの溜息を合図にして、それは消えた。
「……まぁいい、話はあとだ。清夏、変身を解くぞ。良介と入れ替われ」
〈はいっ!〉
 言うなりブラックの体が青黒く光り、変身が解かれた清夏が大きく息を吐く。
 それを待ってか、ソレーユが紅太のそばに立った。
口角を上げ、座り込んだままの紅太に向かって手を差し伸べる。
「……ソレーユ、いくぞ!」
「待ちくたびれたぜ!」
 差し出された手を取って立ち上がると、掴んだ手を中心に赤い光が広がった。
「変身!!」
そして強まった光が収まると、カラーズ・レッドが剣を構えてその姿を現す。
「……っし! インテグレイション完了!!」
 それを横目に、立ち上がった良介の隣へルーナが並んだ。
「もう気は済んだのか、良介」
 少しもこちらを見ないルーナの横顔に、良介はわずかに目を伏せる。
「……お前ら……」
「なんだ?」
「いや……」
 そして顔を上げると、良介は目の前の惨状を見た。
 白く染まった瓦礫と、砂地。そして倒れた人々の姿。
「……いこう、ルーナ」
「ああ」
 良介は息を吸い、大きく口を開いた。
「変身!!」