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マーカー戦隊 サンカラーズ

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 思いのほかヘビーな内容の話を聞かされて、紅太たちは互いに顔を見合わせた。
 しかし安易に何か言うわけにもいかず、良介が少し考えるように頭をかく。
「あー……だからって、知らない人にお菓子もらって食ってちゃダメだぞ? 変な人だったらどうする?」
「でも……」
「あっ、じゃあ! 俺たちも一緒に探そうか」
「おーい! なに言っちゃってんのかな紅太くんはぁー!?」
 しかし実に安易な紅太の提案は、いたいけな少年の心へ期待を抱かせたようだった。正隆は紅太の方へ身を乗り出すと、キラキラと目を輝かせる。
「お兄ちゃん、本当!?」
「うん、いい――」
「よくねぇっつってんだろ紅太!!」
 しかしこの展開はさすがに頷くわけにはいかなくて、良介がまた机の上を叩いて怒鳴った。
「あ、藍川くん! ちょっと……」
「お前、いい加減にしろよ! 安請け合いしやがって。事情もよく分かってないのに、こんな小さな子供連れまわす気か!?」
 良介の怒気ですっかり怯えてしまった正隆に、清夏が慌てて良介をとめる。しかしもう感情が、叱責というよりも怒りに切り替わってしまったらしく、良介は急に止まれない。
「でも、良介」
 しかし紅太も簡単に言ったつもりはないらしく、食い下がるように良介を見た。
「亘くん。私もあんまりそういうの、よくないと思う」
 けれど、援護を期待した清夏からも反対の意見が出て、紅太は言葉に詰まる。
「清夏ちゃん……」
「俺も賛同しかねる。父親はいるんだろう? だったらそちらと円満な生活を営むことに重点を置くべきだ」
 さらに今まで黙っていたルーナにも畳み掛けるように言われ、納得できるものかと紅太は口を開けた。
「でも……じゃあ、コイツが母さんに会いたいのはダメなのかよ? それはないだろ!?」
「紅太」
 部屋の空気が、だんだんと険悪なものになっていく。
それかき消すように、ソレーユが強い声で紅太を呼んだ。そして軽く口角を上げ、ゆっくりと口を開く。
「俺は、手伝ってもいいと思う」
 やっと得られた賛同に、紅太はぱっと目を輝かせた。
「その代わり、宿題もちゃんとやって、遅刻もしないこと。これは最低条件だな」
「なんで?」
「自分の面倒も見られないのに、他人の手伝いなんてできるわけがないだろ?」
 紅太の視線を受けて、ソレーユが言い聞かせるように言葉を続ける。その嬉しさに紅太は顔を高潮させ、口を開けたまま呆然としている正隆を見た。
 こうなるとあとは良介の同意だけという気分で、紅太はおずおずと良介の顔をうかがう。
「良介……」
 良介はしばらく紅太を睨むように見ていたが、根負けしたように溜息をつくと、ふいと目を逸らした。
「……勝手にしろ」
 それ以上反対されなかったことが嬉しくて、紅太は改めて正隆に向かい合う。
正隆の方は未だ展開についていけないようで、呆然とした表情で紅太を見返した。
「……お兄ちゃん……」
「正隆。明日からお前の母さん探すの、兄ちゃんも手伝ってやるよ!」
「ほ、本当……!?」
「でも、暗くなる前には家に帰ること。これは約束だからな!」
 じわじわと喜びが広がるように、正隆の顔もだんだんと明るくなっていく。そして顔を高潮させ、ひどく嬉しそうなで笑った。
 その光景を睨む良介に、心配そうな表情で紅太たちと良介とを見る清夏。その様子をルーナはぼんやりと眺めていたが、すぐ隣のソレーユへ視線を移した。
ソレーユは無表情に紅太たちを見つめている。
 視線を感じたソレーユはルーナを見返し、無表情ながらもわずかに目を細めると、不思議そうな相手の耳元に口を寄せる。
「ルーナ、感じないか?」
 ソレーユが見ているのは紅太なのか、それとも違う誰かなのか。
「……連絡は入っていないが?」
「そこなんだよなー……」
 乱暴に頭をかいたソレーユに、ルーナも顎に手を当ててわずかに目を細めた。



 その翌日、駅前の公園で待ち合わせた紅太と正隆、そして付き添いのような立場で同行することにしたらしい良介は、さっそく正隆の母親を探し始めた。
 正隆によると、町中の聞き込みはすでにしたとのこと。それであんな、荒れた屋敷に潜り込むだなんて、家出した猫を探すようなことをしていたらしい。
「ってことは、あとはマジで歩き回って探すしかないんだな」
「うん」
 頷いた正隆に、紅太はきょろきょろとあたりを見回した。
 母親の顔については、すでに正隆から写真をあずかっているので問題ない。あとは母親の行きそうなところだと思うのだけれど、そちらはすでに正隆が当たった後だ。それ以前にこういった状況だと、母親がこの町にいるかどうかから疑わしい。
「正隆。お前の母親、どうしていなくなったんだ?」
 他に手がかりはないか、紅太がそう正隆に尋ねると、正隆は表情を曇らせて俯いた。
「よくわからないけど、お父さんと喧嘩したんじゃないか、って思うんです。お母さん、いなくなっちゃう前に、お父さんといつも喧嘩してたから――」
「正隆!!」
 いきなり背後からかけられた声に、三人は振り返った。
 そこには一人の男が息を切らせて立っていて、突然現れた男の姿に眉をひそめた紅太と良介をよそに、正隆が驚きに目を見開く。
「お父さん! どうして……」
「お前こそ何をしてるんだ! お母さんのことは忘れろと言っただろう!?」
 言いながら正隆の父親は早足で近づいてくると、その勢いに怯えて強張った正隆の腕を乱暴に掴む。さらに強引に引っ張られ、正隆がよろめいた。
 その乱暴な動作に、紅太が慌てて正隆に向かって手を伸ばした。
「あの、お父さん。正隆くんは――」
「なんなんだね? 君たちは」
 しかし父親の手で振り払うように拒まれ、その迫力に紅太は思わず口篭る。
「どういうつもりか知らないが、うちの子を連れ回すのはやめてくれ。いくぞ、正隆」
 そう言い捨てて紅太たちに背を向ける父親に引っ張られ、正隆は紅太と良介を振り返る。その表情は引きつっていて、それ以上にひどく不安そうだ。
 腕を引っ張る父親を拒むように、正隆も足を踏ん張る。
「でも、お父さん……」
「駄々をこねるんじゃない! 行くぞ!!」
「桃代ちゃん」
 そうしている内に、不意に聞こえた女性の声に、正隆が体の動きを止めた。
「おいで」
 女性の声はそう続けると、軽い足音が音の元に近寄っていく。
堪らず声のした方へ顔をめぐらせた正隆は、そこで見た光景に大きく息を吸った。
「……お母さん……!」
 正隆の呟きが聞こえた紅太も、慌てて預かっていた写真を見る。
そこにはたしかに、今目の前で女の子と一緒に歩いている女性の姿がうつっていて、紅太はもう一度顔を上げて女性の顔を見た。
「お母さん!!」
「正隆!!」
 たまらず父親の腕を振り払った正隆に、慌てた父親がそれを追う。
 不意に、言いようのない悪寒が小唄の背筋を走った。
「――あぶない、正隆!!」
 そして聞こえる耳慣れた声に、紅太は顔をそちらに向けた。
 何もないはずの空中で、突然いくつもの火花が散る。
 突然現れた人影は母親に向かって飛び上がると、持っていた剣でその背後を切りつけた。