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マーカー戦隊 サンカラーズ

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 それをブラックがはじくが、さらに別方向から飛んできた円盤がブラックにぶつかった。
 防ぐ間もなかったそれに、火花が散り、ブラックの体がバランスを崩す。
「ブラック!!」
「なんっ……くっ……!!」
 その間にも攻撃の手が緩むことはなく、清夏は足を止めない。
「安恵ちゃん!!」
 そう叫びながら、自分を攻撃からかばうように躍り出た影に、安恵は目を見開いた。
「清夏……」
 呟いた安恵の目の前で、背中に衝撃を受けた清夏の体がわずかに反る。そしてそのまま、ゆっくりと崩れ落ちた。
 攻撃の手が緩み、敵の影を追うレッドの剣が大きく風を切る。移動速度を落とした敵は電池が切れたおもちゃのようにゆっくりと動きを止め、レッドの剣に薙ぎ払われた。
 火花と共にノートは白く光り、宙に浮いたかと思うと、二つに分裂した。そして安恵とブラックの胸元へ引き寄せられ、まるで吸い込まれるようにして消えていく。
 それと同時に二人は変身を解くと、倒れたまま動かない清夏の元へ駆け寄った。
「清夏ちゃん、清夏ちゃん!!」
紅太が抱き起こして呼びかけるが、清夏は眉間に皺を寄せてうめくだけで、目を開く気配はない。
「ゆするな紅太! ケガは……!?」
 焦って乱暴になる紅太に、良介が腕を掴んでそれを止め、清夏を見る。背中に攻撃が当たったが、それがどういう状態なのかきちんと確認しておきたい。
「……どうして……?」
 不意にすぐそばから掠れた声が聞こえて、紅太と良介は顔を上げた。
「どうして私なんか庇うのよ、清夏……!!」
 二人の目の前では、一人の女子生徒が目に涙をいっぱいに溜めて、清夏を見下ろしていた。
「え……?」
「私はアンタのこと、見捨てた、のに……っ」
 溜まっていた涙が零れ落ち、掠れていた声が震えて、彼女は大きく息を吸い込む。
「なんで!? どうしてよ! 答えなさいよ、清夏!!」
「……安恵ちゃん……?」
 その声に気が付いたのか、薄く目を開けた清夏が声の主を見る。そして相手の表情を見上げ、困ったような笑顔を浮かべた。
「どうして、かなぁ……? ……私にも、わかんないよ……」
「清夏……」
 ゆっくりと起き上がり、支えていた紅太に視線で礼を言う。そして清夏は改めて、昔友達だった相手に向かって笑ってみせる。
「安恵ちゃん……ケガ、なかった?」
 彼女は顔をぐしゃぐしゃに歪めると、清夏の肩に頭を乗せた。
「……バカ……っ!!」
 清夏たちのやりとりに、紅太たちは静かにその場を離れる。良介のそばにルーナが立ち、その隣から、どこか見覚えのある男が紅太を見た。
良介をもっとずっと明るくしたような雰囲気の、強い目をした若い男。
「紅太」
 その聞き覚えのある声に紅太は一瞬目を見開くが、すぐに顔を笑みの形にゆがめてみせる。
「……どうしてお前、俺の体から出てんの? ソレーユ」
「俺の力が回復したことと……俺とお前の精神が、乖離しすぎたせいだ。良介とルーナが離れたのと同じように」
 精神が離れたというのは、思考が食い違ったということだろうか。
「……そう……」
 思ったが、その疑問もどうでもいい気がして、紅太はただ相槌を打った。
 一応片付いたとはいえ、結果として清夏が傷を負ったのだ。それがどうにも申し訳なくて、紅太はてのひらを握り締める。
 どうしてルーナは、ソレーユは、良介は。清夏が記憶を消してほしいと言ったことに対して、あんな風に理解を示せたのだろう。自分だけがそれを理解できなかった。たとえば清夏の望む通りにしていれば、清夏を忘れたあの女子生徒は何に惹かれることもなく、この部屋に現れなかったのかもしれない。そして彼女が驚いて動きを止めなければ清夏は、それを庇おうなんて考えなかっただろう。そうなれば怪我を負うことだって――もしもなんて有り得ないと分かっていても、ついそんなことを考えてしまう。
「……なぁ、良介。俺、そんなに変なこと言ったのか?」
 とにかく不安で仕方がなくて、紅太は良介に尋ねた。良介の言うことがすべて正しいだなんて思わないけれど、それでも良介は紅太よりずっと色々なことを知っている。
 ただ今回は説明されてもどうしても納得できなくて、あんな風に反論することしかできなかったけれど。
 良介はわずかに目を伏せたが、改めて紅太に視線をやると、ゆっくりと口を開いた。
「……よかったな、うまくカタがついて」
「だよな? 間違ってなかったよな!?」
 しかし良介はそれ以上は何も言わず、紅太を一瞥もせずに教室から出て行く。
「……良介?」
「行くぞ。保健室行って、関口の手当ての道具借りてくる」
「あ、待てよ!!」
 それを慌てて追いかけて、紅太は良介の隣に並んだ。



 裾の長いドレスが風になびく。
 冷え始めた季節には不釣合いな薄手のそれは、やわらかな曲線を描いていた。
 長く美しい銀髪を揺らし、ゆっくりと目を細める。視線の先には一人の少年が歩いていた。
 隣を歩く友人の問いに答え、少年は静かに視線を逸らす。その冷えきったたような、乾いたような眼差しに、赤々とした唇を歪める。
「……見つけた。あそこにも……」
 ブランシュは呟くと、光の中に姿を消した。