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マーカー戦隊 サンカラーズ

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〈ちょ……レッド、どうするんだ?〉
「まぁ見てろって」
 レッドは相手を見ると、振り下ろされた相手の剣に真正面から自分の剣をぶつけた。ノートよりレッドのパワーの方が強かったのか、ノートが獲物を取り落とし、体勢を崩す。
〈やった!?〉
 しかしノートは体勢を低くしたかと思うと、身をよじってレッドの顔面を狙って蹴り上げた。
 レッドがそれを避け、蹴り上げた反動で体を起こしたノートと、入れ替わるように体勢を低くする。
 身を低くしたレッドの背後から、ブラックが姿を現し、ノートに向かって無数の光のつぶてを撃ち込んだ。
「いやあああああ!!」
 けたたましい音を立てて火花が散る。そしえ悲鳴と共に光ったかと思うと、ノートの体が大きく爆発した。
 立ち上った煙を見て、背後を振り返ったレッドが手を上げて見せる。
「さすがだな! ブラック」
「あの程度の敵、一人で片付けてほしいものだな」
 煙は白い光に姿を変えると、空に上り、街中に飛び散っていった。



 薄暗い部屋の中、机に向かって項垂れた後姿を見つけて、視線を落とす。
机の上には無数に散らばったデザイン案。どれもこれも、彼女の特徴が顕著に現れている初期の作品ばかりだ。
「……鎮華」
「笑いに来たの?」
 声をかけると、鎮華は振り返りもせずそう返事をした。
「笑えばいいじゃない。ちょっと売れたぐらいでいい気になって、バカみたいって。こんなに簡単に飽きられて! 今じゃ私の作品なんて誰も買ってくれない!!」
 努めて冷静であろうとしたのだろう声が、強張る。
そしてそれは怒鳴り声のようになって、次第に滲んでいく。
「売れたかった! 私の作ったものなら、なんでもいいから! どんなものでも、いいから……!!」
 やがて肩を振るわせ始めた鎮華に、そっと近寄ると、その体を支えるようにして腕を回した。
「売れるよ……評価してもらえるよ、鎮華の作品。好きだって、思ってもらえる」
「うそ」
「うそじゃないよ。鎮華の作品が好きな私が言うんだから」
 こうなってもまだ息を殺す鎮華に、こちらまで息がしにくくなって、ゆっくりとその肩を撫でた。
「……ごめん、鎮華。私、言い方間違えた」
「ううん……」
「流行に敏感になれっていうのは本当。でもそれを鵜呑みにして、鎮華の元のカラーが消えちゃったら意味がない。わかる?」
 頷いた鎮華に、そっと頭を寄せた。
「ごめんね。私も本当は、わかってたの。このままじゃいけないって」
「……頑張ろう、鎮華」
「うん……」
 机の上に乗った鉛筆が転がり、机に突いた手に触れて、動きを止めた。



「清夏ちゃーん。清夏ちゃん家ってさ、DVDのデッキある?」
 最近には珍しく、この日は朝から元気な様子で、紅太が清夏の机に頭を乗せて首をかしげた。
 それを見て良介が眉間に皺を寄せる。紅太は言動も仕草も全体的に幼いが、何か強請る時だけは、その子供っぽさが武器になることを熟知した戦法を取ってくるから油断ならない。
 現に清夏は、まるきり微笑ましいものを見る目で紅太の顔を覗きこみ、すっかり話を聞く気でいる。何を強請られるかなんてわかりきっているにもかかわらずだ。
「え? あるけど。どうして?」
「姉ちゃんがさ、今日はDVD見ちゃダメだって……なんかまた、シズカさんと企画書作るとかって」
 今朝方見た姉の嬉しそうな顔を思い出し、紅太は笑った。二人の間に一体何があったか分からないけれど、鎮華に奪われていた記憶が戻って、姉があんな風に笑っているなら、きっと悪い変化ではなかったのだろう。
 上機嫌ついでに清夏へ、だからDVD見に行っていい? ――と尋ねる。
そこへいきなり頭を鷲掴みにされ、紅太は驚いた。
「ひっ!? ……うわ、良介パパじゃーん……」
「誰がパパだ。だいだいお前はまた、関口が断りそうにないからって無理言うんじゃねーよ」
「そうそう。妹は可愛がってやれよ、兄ちゃん。良介パパの言うとおりさ」
「誰がパパだっつってんだろーが!!」
 そこへクラスメイトからの茶々が入る。
そんないつもどおりの朝の光景に、相も変わらず良介の怒鳴り声が響いた。