小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

マーカー戦隊 サンカラーズ

INDEX|11ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

 そうやって歩いていると、ちょうど商店街へ続く道に差し掛かる。ふと気付くと目の前に女の子が立っていて、紅太は足を止めた。
 真っ赤な髪をボブカットにして、黒地に蛍光色を当てるというパンクな印象の服を着た、釣り目の女の子。
 女の子は紅太の顔を真っ直ぐに見上げると、口を開く。
「君は、みんなから好かれることに興味がないの?」
「え……?」
「そう……だったら、いらないね」
 思ったより少し低い声でそう呟き、女の子は商店街の方へと体の向きを変えた。
 商店街はここのところずっと人が絶えることがないらしく、早朝にも関わらずざわざわと落ち着かない空気が漂っている。
「何だ? 今の子……」
 人ごみへ向かっていく少女の後姿を、なんとはなしに見送る。
〈今のは……!〉
見送っているうちに、不意に少女の体が淡く光ったかと思うと、そのまま白い光の塊に変わっていった。
「……え!?」
 光の塊は縦長に姿を変え、先端がとがったかと思うと、光が弾かれて中身が剥き出しになる。
 そこから現れた怪物は鉛筆のような形をしていて、思わぬ展開に紅太は大口を開けてその場に固まった。
〈……やはりそうか〉
 しかしソレーユは気が付いていたらしく、固まった紅太の体を勝手に動かして、ノートに向かって勢いよく駆け出す。
「紅太!!」
「りょ、りょりょ良介!」
 背後から自分を呼ぶ良介の声が聞こえて、紅太は首だけ無理矢理に振り返った。ルーナの指示だろうけれど、良介はきちんと自分の意思でこちらに向かっているらしい。
 援軍の出現に安堵したところで、ソレーユの意思だろう、紅太の首がノートの方へ向き直された。
視線の先では、急に現れた怪物に人々が悲鳴をあげて逃げ惑っている。
それを目の前にしたノートが、何を思ったか自分の頭をそいだ。それに驚いている間に、頭部だったはずの場所からは再び頭が生え変わる。そいだ頭は光の球体になり、ノートはそれをボールのように手元で弄んだ。
「うわっ……わわわ!! なんだアレ!?」
「頭挿げ替えるとか、ロケット鉛筆じゃあるまいし……!」
 ノートが光の玉を人に向かって投げつけた。
投げつけられた光は人の頭に貼りつき、白く発光したかと思うと、頭から離れてノートの元へ戻っていく。
〈なるほど。あれで記憶を奪っているのか〉
〈ソレーユ、指令は入ったか?〉
〈入った。なんとか復旧したようだな〉
 ソレーユが嬉しげに言うと、呆けたままの紅太の手で思い切り紅太の胸を叩いた。
〈紅太、変身するぞ!〉
「ごほっ!! へっ? へ、変身っ!!」
 言われるままに紅太が叫ぶと、胸を叩いた手を中心に、紅太の体が赤く光る。そして光が消えたかと思うと、紅太の体はカラーズ・レッドへと姿を変えていた。
「インテグレイション完了! よし!」
 レッドが動作を確かめるように手を叩き、得られた手応えに拳を握る。
〈良介、俺たちも変身だ〉
「やっぱりか……」
〈当たり前だ。いくぞ〉
「くっ……へ、変身……!!」
 そしてこちらも、さも嫌そうな良介の声と共に青黒く光り始める。光は良介の体全体を包み、その光が消えたかと思うと、良介の体もカラーズ・ブラックに変身していた。
 変身の光でか、こちらに気付いたノートが振り返り、レッドとブラックの姿を見つける。
〈なぁ、レッド。今度のアレ、何のノートなんだ?〉
「わからん。だが、ノートは宿主を近くに置きたがるんだ。こいつの元になった記憶がわかれば……」
 レッドはどこからか剣を取り出すと、ノートに向かってそれを構えた。
「ブラック、頼んだ!」
「ああ」
 その声を合図に、ブラックは宿主の探索に走り出し、レッドは剣を振りかぶるとノートに向かって斬りかかる。
 それに対し、ノートが一瞬動きを止める。しかしまた自分の頭をそぐと、新しい頭が生えるのと同時に手にした頭が形を変え、長い棒状に伸びた。
 棒がひときわ強く光る。
 そしてそれは、振り下ろされたレッドの剣を難なく受け止めた。
「なっ……!?」
「ステキね。それ、もらったわ」
 レッドの剣がぶつかった部分を中心にして、ノートの持っていた棒が形を変化させる。そしてすぐにレッドの剣と同じ形をとると、ノートはそれを大きく振り払った。
 それに弾かれた格好で、レッドが広く距離を取る。
〈嘘だろ!? あれ、レッドの剣じゃないか!!〉
「なるほど……コピーの能力か」
 しかしレッドはうろたえた様子もなく、改めてノートに向かい、剣を構え直す。
「悪い? だって、そっちの方が強いんだもの。勝てばいいのよ、こういうことは」
 ノートの方も余裕綽々の口調で、レッドの呟きに答えた。その口ぶりは優越感に満ちていて、レッドの劣勢を確信しているようようだ。
〈なんだって!? こちらの方が強いことを認めるなんて、悪役の風上にも置けないことを……!!〉
〈またあいつはアホなことを……〉
 一方で緊張感のない紅太の声が聞こえて、探索中のブラックの中で良介が溜息をつく。
 レッドは落ち着き払った様子を崩さず、ノートの言葉に鼻で笑った。
「勝負するのに敵のコピーとは、ずいぶん自分の武器に自信がないんだな?」
「馬鹿なことを。より強い武器があるなら、そっちに乗り換えた方が賢いに決まってるわ」
「どうかな!?」
 言うなりレッドは剣を上へ放り投げると、一気に距離をつめ、ノートの腕を掴んで相手の剣を掴んだ。そしてそれを捻り、できた狭間にキャッチした自分の剣を差し込んで動きを封じ、ノートの胴を蹴り払う。
 蹴りで体が吹っ飛ばされ、自分の剣を避けられなかったノートは、火花を飛ばしながら地面に転がった。
「な……なんだと!?」
「戦い方が問題なんだぜ? こういうことは、な」
「くっ……!!」
 さも楽しそうなレッドの口調に、ノートは武器を剣から棒に戻す。
 宿主を探してあたりを見回すブラックに、良介も意識だけで人影を探す。清夏の時は宿主が青い顔ですぐそばに横たわっていたけれど、それは今回も同じなのだろうか。あまり何度も見たいものではない。
「……いたな」
 見つけたらしいブラックがそちらに向かうと、やはり青白い顔をした女の人が横たわっていて、良介はその痛ましさに唇を噛んだ。
「レッド! 確保完了だ」
「了解!」
 宿主が見つかったことで焦ったのか、レッドと向かい合っていたノートが息を呑み、標的をブラックに変えて突進する。
「いやだ……やめろ、見るな! 見るなぁあっ!!」
 必死な叫び声に、つい紅太も宿主らしい人影に目をやった。その人影はどことなく見覚えがあって、不意に覗いた顔に紅太は目を見開く。
〈シズカさん……〉
 以前は、たまに家を訪れては姉と酒を飲み、何か話し合っていることがよくあった。デザイナーだと聞かされ、見せてもらった服の絵はすべてどこか似た雰囲気のものだったけれど、これなら彼女のものだとわかりやすくていい、そんな風に思った覚えがある。
 ノートの行く手をレッドが阻み、一心不乱の動きで棒を振り回す相手に向かって剣を振りかぶった。
 それをわかっているのだろう、ノートも棒を振りかぶる。棒は光ると、再びレッドの剣の形に変化した。先ほどの肉弾戦交じりの戦法を警戒してか、空けた片手を盾のように翳している。