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僕の村は釣り日和4~賛美歌

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「ところでブラックバスは本当に他の魚をたくさん食べるの?」
 僕がそう尋ねると、父がやや神妙な顔付きになった。
「明日の朝、また釣りをしよう。その時、答えを教えてやるよ」
 父親はビールをグーッとあおった。
「おかわり、ください」
 僕がそう言うと、キャサリンさんはニッコリ笑って、ムニエルを皿の上に乗せてくれた。
「東海林君はいいのか?」
「いや、俺はお腹というより、胸がいっぱいだ」
 そう言いながらサラダに手を伸ばす。
「焼きたてのパンもあります」
 キャサリンさんが持ってきてくれたパンは形こそ不格好だが、いい匂いが漂ってくる。食べ盛りの僕としては、本当はご飯を食べたいところだが、たまには夜にパンを食べるのも悪くない。
 僕は早速パンに手を伸ばした。
「あっちちちちっ!」
 焼きたてのパンは本当に熱かった。パンをフーフー言いながら食べる機会など、そうざらにあるものではない。僕は少し粗っぽいけど、素朴な小麦粉の味を噛み締めながら飲み込んだ。
 ポールさんと父親はビールからウイスキーに変え、釣りの話で盛り上がっている。
 東海林さんが急に立ち上がった。彼は部屋の隅に立て掛けてある古びたギターを手にすると、ボロンとかき鳴らした。
「これ、弾いてもいいですか?」
「プリーズ。どうぞ、どうぞ」
 真っ赤な顔をしたポールさんが答える。
 東海林君はペグを回しながら音を調節し始めた。彼がギターを弾けるなど今まで知らなかった。
 ポーン、ピーン……。
 絃を調節する音が響く。みんな東海林さんに注目した。
 東海林君がギターをつま弾き始めた。続いて澄んだ美しい声が僕の耳に。
「いつくしみ深き 友なるイエスは……」
 そう歌い出された曲は、親しみのあるメロディだった。
「何の曲だろう?」
 僕は父親の耳元で、歌を邪魔しないようにささやいた。
「賛美歌だよ。イエス・キリストをたたえる歌さ」
 ポールさんもキャサリンさんも、真顔で東海林君の歌に聞き入っている。東海林さんの澄んだ歌声は、ログハウスの桧に染み込んでいくようだった。そしてその声は、いつも学校の音楽の授業でつまらなそうに歌う東海林君の声とは、まるで別ものだった。
「アーメン」
 その言葉を最後に曲は終わった。みんなで東海林君に拍手を送った。彼は照れ臭そうに頭をかいた。お酒を飲んだわけでもないのに顔は真っ赤だ。