「姐ご」 4~6
「姐ご」(6)
一口馬主
「ごくどう」の厩舎が一気に忙しくなりはじめました。
タイアップをした一口馬主の投資会社「エクセル」の資金集めが
インターネットで評判になり、急速に加速してきたためです。
「エクセル」はインターネットを中心に、
ひろく一口馬主を募って、運営資金を集めている投資専門の会社です。
個人による出資金を元手に、産地で競走馬を買い集め、
馬が稼ぎだした獲得賞金次第で出資者へ、
利益を還元するという仕組みを作りだしました。
そのエクセルへ、地方競馬出身とはいえ2000勝の実績を持つ
元騎手の調教師が参加をしたということで、
会社の信用度があがりました。
工藤の登場が大きな説得力をもちはじめ、絶好の広告にもなりました。
やがて面白いように、一口馬主たちの出資金が集まり始めます。
いままでは趣味や道楽の範囲として出資していた一口馬主たちが、
馬が勝ちさえすれば確実に、配当が期待できるビジネスとして
熱く注目をされ始めました。
「勝てば、配当が来る」この期待感に支えられて
投資会社「エクセル」は、時の経過と共に
売り上げと業績を急束に伸ばします。
工藤厩舎は、投資会社「エクセル」によって買い集められてきた
たくさんの育成馬たちで、あふれかえるようになりました。
一度は仕事を失った厩務員や、
元騎手たちも工藤厩舎に集まってきました。
勢いを増し続ける「エクセル」の資金力に支えられて
工藤調教師が、「エクセル」から全面的に委託を受けて北海道まで、
若駒の買い付けに、度々出張するようにもなりました。
「プロが現地に買い付けに行く」・・・・このニュースが、
さらに一口馬主達を過熱させました。
ありあまる潤沢な資金のもと、
有望な血統馬たちが次々と買いこまれ高崎競馬場の廃止以降、
壊滅寸前だった境町のトレーニングセンターへ日々、
運びこまれるようになりました。
競争馬が増え、そのための人員も増え、工藤厩舎が
日に日に大きくなりました。
周囲も、廃止された高崎競馬場からの奇跡の復活劇として、
これにおおいに注目をします
トレーニングセンターとしての機能を失いかけた厩舎に、
かつての活気があっというまに戻ってきました。
いくつかの厩舎も復活をして、いつも間にか総数で、100頭を越える
育成馬たちが調教されるようになりました。