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「姐ご」 4~6

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 朝の予定をひととおり済ませて、
一息入れて寛いでいる工藤厩舎へ、姐ごが突然現れました。
驚ろいたことに、高崎競馬の重賞馬、エアーホースワンも
一緒にやってきました。
エアホースワンは、他厩舎に所属する馬で、
「ごくどう」厩舎とは、縁も所縁もありません。

 

 「ごめんねぇ~、
 この子の厩舎が廃業してしまっために、、
 この子が寝泊りをするお宿が無くなっちゃいました。
 ネぇ工藤ちゃん、
 私からの一生のお願い。
 この子をここで、面倒を見て頂戴 」



 いきなり、高崎大賞典(年末に行われる、
高崎競馬の最高賞金レース)に勝利したエァーホースワン号の登場です。
この馬は工藤調教師の元愛人で、赤見騎手と並ぶもう一人の女性騎手、
大田真弓がよく騎乗していた馬でした。



 「真弓ちゃんが乗ってた馬なのよ。
 あなたにも、多少のご縁があるでしょう、
 工藤ちゃんにとっても、まんざらではないと思うけど・・・
 ねぇ、お願い」



 馬に問題はありませんが、工藤もすこし不安です。
姐ごにも問題はないのですが、なにしろその背後にいる、本当の馬主は
実は、泣く子も黙る鬼の「総長」なのです。
そこにだけ、はなはだ問題がありました。
できれば工藤も、あまり総長とは関わりを持ちたくありません。



 「よお、ごくどう。
 姐ごが心底困っているんだ。
 おめえも、高崎じゃあ、ここに工藤ありとまで言われた男だ。
 気持ちよく引き受けたてやれや!
 総長も喜ぶ!」

 突然、背後から瓦屋が現れました。

 「瓦屋の馬鹿野郎、
 だからおめえは気が利かねえって、いつも言ってんだろ。
 いくら周知の事実でも、それだけは口にして、
 言ったらいけねえ一言だ。
 第一、はっきり言っちまったら、ここで姐ごが困るだろ、
 此処じゃ、堅気のお姐さんで通しているんだ。
 ねぇ姐ご。」

 いつの間に来たのか、
姐ごとエァーホースワンの背後には一升瓶を肩に担いだ瓦屋と、
そのまた背後にはすでにかなり酔っ払っている
装蹄師が立っていました。


どうする、工藤?


(6)に続く


作品名:「姐ご」 4~6 作家名:落合順平