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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア春

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言い訳の一日



「風が強くて?」

「あともともとの寝癖もある、し?」

「ほこりが多分付いてさあ」

「固まったっていうか」

「悪い。(汚ならしくてみっともなくて)」

「何とか言えよっ石間っ」

 ……。

 だいたい俺は寝癖一つでこんなに言い訳する必要があるのか。
 公衆の面前で、なにかボロだしてない……よな。よけい石間怒ったか?
 朝から石間の声といえば「なにその頭」としか聞いて無いけど。ああいやなかんじ。

「石間クンはね、ちっと焦ってんの」
「うるせえぞ江差」

 なんだよ。江差の言葉になら反応すんのかよ。
 ムカムカしてきたからクルッとイケメンsに背中を向けて、教室を出ようとドアに手を掛けた。
 三好がニヤニヤしてるのが見えた。
 廊下は日当たりが悪くて、ついでに無駄にホールが広かったりする。春だというのに寒い。
 当ても無く廊下をズンズン進んでいると、急にトイレに行きたくなった。ちょうど目の前にトイレがあったから入る。
 鏡の前を通った時になんとなく違和感があったけど。
 してる間もへんな視線が気になったけど。
 手を洗って……鏡をちらっと見……て……

「ってうわわわあーーッ!」
「だから、ね。今日は石間と空き教室にでも行って時間つぶしてな?」
「うわっえっ江差っ」

 いつのまにか俺の横に江差がいた。
 鏡の中で見たんだから、どれだけビビったって恥ずかしくないぞ。びっくりして当たり前だろ。
 それよりも気になるのは、まるで茶髪腰パン軍団のみんながやってるみたいなツンツンヘアーに、俺の髪がなっているということだ。

「なんかゴワゴワしてると思った」
「それさ、チャリこいで風に吹かれただけでなる髪型じゃねえよ」
「え?」
「知ってっか? 石間とか30分以上かけてる」
「俺は家から学校までは」
「だからそうじゃなくって!」

 江差はズボンをずりさげてうまく気に入るポジションに落ち着けて、トイレを出ようと言ってきた。たしかに中にたむろしてる人の視線が気になってた。

「石間は」
「んー?」

「俺にむかついたかな」
「進ちゃんに?……なんでそう思う?」

「似合わない髪型してるから。タイプじゃないじゃん? っていっても好きでしてるわけじゃないけど。睨んでたし」
「似合ってるよ。デコ全開」

 トイレ脇の壁に座り込んだ俺の額を江差がペチペチとする。
 『あんたは額だけは美人だね!』って母さんがよく言うんだよな。 そんなことを考えていたら急に疲れた。

「そうださっき三好が」
「みよっつぁんが?」
「髪とかしてくれたはずなんだけど、あいつ全然だめじゃんな」

 俺は笑いかけたのに、江差は眉を潜めた。

「ナルホド、元凶は三好ねえ。……いま石間呼んで来るからそこにいろよ進ちゃん」
「え?」
「今日さぼりな」
「マンガみたいだな。どうやったってばれるのになんでサボるん」
「それは石間が教えてくれるから」
「なんでサボんなきゃなんないん」
「頭」
「……そんなに汚いのか。保健室ってシャンプーあるかな。おれ石鹸じゃ頭皮がかゆくな」
「ハー、こりゃダメだ」
「参ったな。不潔なのキライか」
「誰が?」
「石間」
「友達?……なんだから、そんなんで嫌わねえよ」
「うん。そうか」
「あれえ。反応薄い。違うのか」
「嫌うよな」
「そうじゃなくて」
「まあいっか嫌われても」
「そうそう。……ってええ!?いやいやいや」
「俺は嫌いになんねえから。あ。そういえば生活指導の先生ならシャンプー持ってそう」
「あ、……ああ?…………あ、あ。」

 そうだよな。男も清潔感だよな。
 石間や江差は格好いいからそれだけでオーラがあるし、ちょっと汚いくらいがまたワルっぽくていいけど、そのた大勢は駄目だ。気を抜いたらただの

 ただのなんだろう。
 職員室に向かって歩いていたら後ろから江差が追いついて来た。

「だから待てって」
「江差」
「シャンプーなら石間が知ってっから。あいつ黒髪戻しがよくバレて」
「いいよ自分で」
「だあああ!もう!」
「あ、チャイムなった」
「おわっまじか」
「授業始まる。どうすんだよもう」

「石間っ!!」
「え?」

 いきなり、江差が教室に向かって声を上げた。職員室の前だぞ。

「いっしまくーんっ!!!」

 江差が廊下のど真ん中での叫びが終わるか終わらないかのところで、ダッシュで石間が飛んで来た。なんで腰パンで走れるんだ?

「石間、あとでゆっくり聞かせてもらうからな! とりあえず逃避行しなっ!」
「サンキュー。……言う気ねぇけど」
「オイッ」

作品名:ブローディア春 作家名:しらとりごう