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しらとりごう
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novelistID. 21379
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ブローディア春

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 きっと、俺は石間を色んなフィルターかけて見てると思う。
 でもそれはホントの石間がどんなでも構わない。その上で自分だけの楽しみっていう感じで、そう、そういう好きになり方もあるんだ、きっと。
 石間はフィルターの向こうを見越して俺のこと好きでいてくれるんだろうか。

「なあ、石間はどこを見てるんだ」
「鼻」

 向かい合ったたまま少し時間が流れて、俺がなんとなく聞いてみたら石間はボケッとした目で答えた。鼻。

「なんで」
「なんかウサギみたいじゃん」

 ウサギは可愛いけど、鼻って、あのフンフンっていうかフニフニって動いているんだよな? エロ本は動かないけど……

「なんの話してるんだ? 女子の鼻って化粧が浮いてて俺はやだな」
「あ。」

 石間が手のひらを横にそろえて顔を覆った。困ったっていうポーズ。なにが困ったんだ。

「自分でエロ本はみんな好きって言ったくせに照れるのかよ!」
「ちがうって……エロ本じゃなくて……」
「ん?」
「木野を見てた……」

 そう呟いて、石間は階段をかけ上って行ってしまった。

「い、石間……薄情者!」

 次のチャイムが鳴るまでどう過ごせば。
 しょうがない。
 さっき教えてもらったように、端にある消火栓の影に身を寄せて腰を下ろした。一人だと、結構床が冷たいことに気づく。背中も、消火栓のケースもヒヤリとする。石間って体温が高いのか、もしかしたら俺が興奮しすぎてたのかもしれない。

「鼻って、けっこうマニアックなんだな石間」

 さっきからのギモンを口に出してみた。思ったとおりガランとした廊下に自分の声が響いた。
 俺は、エロ本の内容はあんまり覚えていない……。いつも最初に見る投稿欄、俺が参考になるような話って、ぜんぜん無いんだよな。でもいつかそんな内容が出てくるんじゃないかって期待して、三好と三好の兄ちゃんから借りるんだ。
 石間は俺がどういうとこみてると嬉しいんだろう。俺は見て欲しくないなあ。やっぱり女の人可愛いし、でも見てるとこが鼻か。
 うーん。


「俺たちフィルターとかナシだもんな」

 教室に着くなり石間の席に行って言ったら、当たり前のようにいる取り巻きと江差に変な目で見られた。

「なに、進ちゃんと石間、授業サボってタバコしてきたの?」

 ちがうし……
 TPOというものを最近忘れつつある俺は、なにをどう間違っても近づかなかったモテ男とギャル軍団の中に突入してしまっていたのだ。
 立場的にくるしいが、いきなり現れていきなり消えるのは目立ちすぎるのでなんとかこらえる。

「石間は腹痛で長便で、進ちゃんは貧血ってことになってるから合わせろよ」
「んだよその差は」
「石間も最後まで戻ってこなかったら、優しい理由にしたんだけど根性なし」
「コロス」
「なあ、進ちゃんその髪いいじゃん。ねえ石間ぁ」
「うっせえないいよそんなん」

 江差が笑いかけた相手は石間だが、当人は冷たい目を細めて口の端だけで笑いながら怒った。まわりのみんなは二人の会話の意図が読めないようでそわそわと見守るだけで。
 石間の表情はどうしても迫力満点で怖いのに、かっこいいと思ってしまう。
 なんとなく俺も片方の口の端を上げてみようとしたが……器用だな……。

「だいたい俺、タバコやめたし」
「めっちゃ高校生じゃん石間」
「かっけーだろ」
「超かっこいい」

 やっと会話に入ってきたサッカー部員のその「チョーカッコイイ」というのは馬鹿にしたような言い方だった。
 こういうやつらとつるんでいて、石間もそうなのかもしれないけど、俺にはこういうこと言わないよな。
 ほかのやつらも一人だと言わないのかな。
 けなされる話しの中にいると標的にされるのは俺くらいしかいないと思って、なにしに近寄ったんだったかも忘れてフェードアウトすることにした。ちょうど三好が辞書を借りて戻ってきたところだし。

「あれれれれ、木野その頭」

 何だよその顔は!

「三好、オマエ、とかしてくれたんじゃなかったのかよ! すげーもごもごすんだからな!」
「でもこれやったの俺じゃないよ。ね」
「え、」

 なんでわかるんだ。立てたような髪なんてみんな一緒なのに、三好にはわかるのか。自分は立ててないのに。

「どうしたのそれ」
「だからその顔! わかったならいいだろ」
「わかんないなあ教えて進二郎~」
「石間に聞けよもう!」

 俺はそういって気づいた。クラスの全員が、俺と三好のやり取りに注目しているということに。
 石間が舌打ちをしたのが聞こえてせいで、俺はそっちの軍団のほうには首が曲がらなくなってしまった。三好を見たらへへっと笑って席についてしまうし。

「それ石間プロデュースだったの?」
「木野ってほんとに石間と仲良かったんだな」
「じつは付き合い長いの?」
「進ちゃん明日もその髪型でくるんでしょ」
「イメチェンだねー」
「つうかイメージ変わりすぎ。まだ馴染まないけどいいんじゃね」

 ………。
 なにかいろいろと質問攻めにあって、それは冷静に考えるとたいした内容じゃないし回答も求められていなかったように思う。
 なのに俺はいいわけがましく口を開いて、でも迷って、それがどうだこうだと女子にはやし立てられて、ああ困った……
 やっと見れた石間の顔……
 石間がすごく優しい笑顔で俺の事を見ていた……

作品名:ブローディア春 作家名:しらとりごう