「姐ご」 1~3
「姐ご」(3) 蹄鉄(ていてつ)
一般社会と隔絶して存在する地方競馬のトレーニング・センターには、
実に多様な人種が集まってきます。
競走馬の身辺には、調教師、厩務員、騎手、獣医などが群がり、
さらにその人種の回りと競馬場には、馬主や予想屋、
新聞記者などが入り乱れます。
蹄(ひずめ)に蹄鉄を打つ、装蹄師(そうていし)は、
競馬界のなかでも、最も日の当らない特殊な仕事のひとつです。
良く言えば縁の下の力持ちであり、文字通り競走馬を
足元から支えるために、不可欠な職種です。
競走馬に限らず、馬の爪(蹄)の成長は早く、
ひと月で10ミリほど伸び、それは一年で生え換わります。
平均400~500㎏もある馬体を支えて、
高速で疾走してもびくともしない蹄ですが、アルカリにはごく弱く、
病気のもとにもなるために、蹄の管理には大変な神経を使います。
伸びた爪を削蹄して蹄鉄を打ち変えるのが装蹄師の仕事です。
普通約20日おきに削蹄して、蹄鉄を打ちかえます
それもただ打ちかえるだけではありません。
その馬の特徴や脚の力、歩き方(身体のよじれや傾き)までも見抜いて
それぞれの馬に、オーダーメイドでつくります。
競走馬に関しては、獣医以上に、
蹄の構造や機能などについての、深い知識を蓄えています
レースに使用する蹄鉄の重量は、120グラム以下という規定のために、
かつては鉄製の調教用とは別に、「勝負鉄」と呼ぶ
競走用の二ュ―ム鉄などに打ちかえていました。