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僕の村は釣り日和3~バスフィッシング

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 土曜日の昼過ぎ。
 東海林君は母親と一緒に僕の家までやってきた。彼の手には二本の釣竿とタックルボックス。背中にはリュックサックが背負われている。
 東海林君の母親は申し訳なさそうな顔をしながら、何度もうちの親に頭を下げていた。そして横目でチラチラと東海林君を見る。本当は心配で仕方ないのだろう。
「大丈夫よ、秀美ちゃん」
 僕の母が東海林君の母親の肩をポンと叩いて笑うと、東海林君の母親は泣きそうな顔で笑い返した。
(本当に東海林君を誘ってよかったのだろうか?)
 ふと、そんな疑問が僕の頭の中をよぎった。しかし、東海林君は浮かれ気分で、早くも道具をうちのワゴン車に載せている。
「おっ、すげえなぁ。天井に釣竿が吊るせるようになっている。まさに釣り仕様の車だな」
 東海林君が感心したようにつぶやいた。彼の表情を見ればわかる。久しぶりのブラックバスとのご対面に、心は踊っているのだ。
「よろしくお願いします」
 東海林君の母親が深々と頭を下げた。少しパサパサの髪が風になびいて、その顔を隠した。だがその下は不安で一杯に違いない。
「お母さん、行ってきまーす!」
 元気よく東海林君が窓から手を振る。後ろを振り返ると、東海林君の母親は小刻みに手を振り、僕の母は大きく手を振っていた。
 こうして、僕と東海林君と僕のお父さんの男三人のブラックバス釣りは、心地よい揺れとエンジンの音で幕を開けたのである。
 竜山湖まではグネグネ道を走らなければならない。その度に僕が東海林さんにもたれたり、東海林さんが僕にもたれたりした。
「ほら、谷底を見てごらん」
 父の言葉に僕も東海林君も、道の下を流れる渓流を見た。水は清らかで、速く流れているところもあれば、淀んでいるところもある。それでも水のかたちは1秒たりとも同じではない。躍動感と生命感あふれる流れだった。
「あそこにはイワナやヤマメがいるよ」
 肩越しに父が笑っているのがわかる。
「水はいいよな。眺めているだけでもワクワクするよ」
 東海林君が目を細めながら、うっとりした表情で谷底の渓流を見つめている。
 やがて車はトンネルを抜けると下り坂に入った。
「竜山湖までもう少しだぞ」
 少しばかりグネグネ道を下ると、道は直線になった。そこで東海林君が天井を見る。
「おじさん、アブのアンバサダー5000Cを持ってきたんですね」