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舞うが如く 第五章 13~15

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舞うが如く 第五章
(14)籠城戦


 諏訪喜智子は、文政二年(一八一九)二月二日、
会津藩士・伊藤氏の三女として生まれました。
名を悦といい、体格はひとよりもすぐれて性質はとりわけて剛健です。
文芸をはじめとして諸芸にも通じており、
時には「男勝り」との評がありました。

 結婚して二人の子をもうけまますが、
姑との折り合いが悪いために、やがて離縁となってしまいました。
再婚はしない決意でありましたが、
藩内の諏訪大四郎という武士に懇望をされて、
名を喜智(後に喜智子)と改めたうえで
再婚をいたします。



 再婚後は内に能く治めて、紊(みだ)れることもなく、
外に対しては夫を助けて功も多く、諏訪家の家運は次第に開けて、
大四郎は遂に禄千七百石の老職にまで昇進を果たします。
また晩年にもうけた一子・栄は、
石川数馬(四百石)の養子になりました。

 慶応四年、八月二十三日、
政府軍が若松城に迫る中で、
夫の大四郎は妻子を残して先に登城をしました。
養子の伊助は、陣将として日光口に布陣したままです。


 喜智は、伊助の妻子と実子の栄を家の従長に託します。
各自には五百両をあたえ、戦禍を逃れて山村に潜ませました。
他の金子などをすべて庭に埋めると、

 「お前たち婦女や幼童らは、会津に殉じなくともよい。
 他日この金をもって酒舗を営み、
 もって、諏訪家の祀りごとを絶やすことのないようにいたせよ。
 私は夫の跡を追って入城し、城を枕に死ぬるつもりである」



 と薙刀を携え、供の者一人を従えて、
追手門より入城をはたします。