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舞うが如く 第五章 13~15

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 琴と作蔵も立ち上がりました。
双方から突入した兵士たちで、橋の上は大混乱となります。
一進一退の激しい攻防が繰り返されること数刻ののち、やがて
ついに血気に流行る会津兵たちの勢いが、わずかに勝りはじめました。
序々に政府軍の兵たちが押しこまれじりじりと、
橋の後方へ下がりはじめます。


 「いまぞ遅れるな、突撃いたせ。」


 崩れかけた敵陣の様子を見て、残った会津兵たちが一斉に立ち上がり、
橋を埋め尽くしての猛突進をはじめました。
しかしその瞬間は、敵によって周到に仕掛けられていた罠そのものでした。
後退すると見せかけた敵兵たちは、橋を退ぞきおわると手はずの通り、
一斉に左右の物陰に隠れてしまいました。
呼応するように正面に現れたのは、最新銃を持つ鉄砲隊の隊列でした。
狙いを定めての、連発銃による一斉射撃がはじまりました。
さらに、2陣、3陣と入れ替わりながら続く射撃は、
まったく止む気配さえ見えません。
次々と橋の上に倒れ込む会津兵の中に、
白装束の竹子の姿もありました。



 尊之介が駆け寄った時には、
すでに竹子の胸は鮮血に染まり、その眼はすでに閉じかけています。
「おのれ」と、唇を噛んでたちあがった瞬間の尊之介の胸を、
もう一発の敵弾が貫きました。
尊之介がそのまま竹子の上に、膝を折るようにして崩れ落ちます。

 激しい射撃が一段落した瞬間に、
左右に隠れていた政府軍が一斉に立ち上がり、
潮のように斬り込んできました。
竹子と尊之介を庇いつつ、
その前方に踊り出た琴が正面からきりこんでくる一人目を
袈裟がけで、一撃のもとに直ちに切り捨ててしまいます。
さらに二人目に向き直ると返す刀で胴を打ち、
そのまま胸を刺し貫いてしまいました。
3人目がたじろぎをみせた瞬間に、
すでにその手元は刀もろとも斬り落としまいました。



 瞬時の早技ぶりに、面前の4人目が
恐れをなして腰を引き、数歩後ろに下がってしまいました。
琴が作蔵を目で探してから、その背中に声を掛けます。



 「作蔵、深追いは禁物!
 まずは、竹子殿を助けよ、
 尊之介は、わたしが介護をいたすゆえ、
 いそぎ、この場より後退いたす。」



 再び始まった激しい銃撃をかいくぐりながらの撤退がはじまります。
しかしようやくにして戦場から離脱させることができた竹子と尊之介は、
もうこの時点でともに瀕死の瀬戸際をさまよっていました。
急を聞いた母と、妹の優子も駆けつけました。
苦しい息使いのもとで、竹子が琴の耳元に最後の願いを告げます。
琴がながい沈黙の後、やがて重い決断を下しました。


 「作蔵、介錯をいたせ。
 竹子どのの、
 たっての願いに、ある。」