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舞うが如く 第五章 13~15

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 翌二十五日の早朝から、かねての手はず通り
衝鋒隊・会津兵に長岡の援兵を加えた、四百名余りの一隊に従って
竹子たちの婦女子隊20名も、城下へ向けて出発をしました。

 坂下より高久を経て、城下の西端にある柳橋まで来た所で
長州・大垣藩の政府軍と遭遇をしてしまいました。
この柳橋の下流には、会津藩の処刑場があるために橋のたもとには、
別れの水盃を交わすための建屋が用意されており、
別名を涙橋とも呼ばれていました。



 橋を挟んで、双方がともに布陣をします。
堤防に展開する敵と味方から、一斉に射撃がはじまり周辺には一瞬にして、
弾幕と硝煙の臭いが立ち込めました。

 埒(らち)の明かない銃撃戦が続く中、
準備をととのえた会津藩の野戦用の大砲が、敵陣を狙って
次々と火を噴きはじめます。
それが狙い通りに政府軍のど真ん中で炸裂をして、
激しく土煙を上げはじめます。
敵陣が浮足立ちとなり、
その動揺ぶりが此方側からも鮮明に見てとれました。


 ここぞとばかりに会津兵が、驀然(まっしぐら)に槍を構え、
刀をふりかざして橋の上を敵陣を目指して突進をします。
遅れまいぞと一声かけて、竹子と女子隊の一団も一斉に立ち上がりました。
それぞれが、薙刀を小脇に抱えて橋をめがけて突入を開始します。


 つられるように尊之介も立ち上がりました。
しかし、琴がその腕をしっかりとつかんで、頭を下げろと命令をします。
その背後についていた作蔵が、なをも立ち上がろうとしている尊之介を、
強引に地面へとねじ伏せてしまいました。


 「蛮勇は、武士道に有らず。
 しばし待て。
 まだ敵との銃撃戦のさなかにあって、動くことはあいならぬ。
 いまだ切り込むための間合いには、あらずっ。」



 しかし橋の中央では、
すでに双方が入り乱れての白兵戦が始まってしまいました。
竹子や優子を先頭とする婦子隊の姿も、その渦の真ん中に見え隠れしました。
それを見つけるやいなや、尊之介が再びたちあがります。
大太刀を抜き放ち、自らに気合をかけた瞬間に入り乱れている
人の渦に向かって、突進を開始してしまいました。