【第十一回】きみの て
「はい」
差し出されたのは白に青い花が描かれている茶碗
「これ…」
その茶碗を見た慧光が緊那羅を見上げた
「御飯だっちゃ」
緊那羅がにっこり笑って言う
「あっ!! てめこのヤロ俺の肉!!;」
慧光の向かい側で中島が坂田のしょうが焼きを奪ったなんだかんだすったもんだを繰り広げている
「肉じゃがも良かったけどしょうが焼きでもいいねぇ~」
南がハッハと笑いながら言った
「少しおとなしく食べるってことはできないんだっちゃッ!?;」
すったもんだしている面々に向かって緊那羅が怒る
「おいちゃんの計算では絶対無理だとおもう」
お面の下からちょろちょろ食べながら鳥倶婆迦が言った
「こんなことしてられないナリ…ッ!」
「まぁまぁ」
立ち上がった慧光の太ももを京助がポンポン叩いた
「腹が減っては戦はできぬっていうじゃん~? 腹減ってるとマイナス思考が更にマイナスになるんよ? 緊那羅オカワ~リ」
京助が緊那羅に空になった茶碗を差し出しながら視線は慧光に向けて言った
「でも…!!」
「信じようよ慧光」
何かを言おうとした慧光に慧喜が言った
「俺らにはなんともできない何も思いつかないなら…大丈夫だって言う緊那羅の言葉…信じてみよう?」
慧喜が慧光を見上げる
「そんなの…だってコイツは天の…」
慧光が緊那羅を見下ろした
「だからなんだっつーの」
京助が程よく山盛りに盛られた茶碗を受け取りながら言う
「ここは天でも空でもなく俺ン家!!」
京助が箸をビシっと慧光に向けた
「関係ねぇじゃん? ここじゃ」
坂田が言う
「そーそーいいじゃんいいじゃん天だろうと空だろうと」
中島も頷く
「だって…なぁ?」
南が箸をくわえたままにーっと笑った
「ここは【天】でも【空】だかでもない正月町は栄野さんのお宅ですし」
南が言う
「だからなんナリか…」
慧光がボソッと言った
「関係ないンちゃう? なぁ?」
軽いゲップの後京助がさらっと言いながら緊那羅を見た
「大丈夫だっちゃ」
緊那羅が笑いながら頷いた
「でも大丈夫って…どうするの?」
慧喜が緊那羅に聞く
「…前に…お祭りの時に迦楼羅達から聞いたんだっちゃ…宝珠を一つ…使えば私にでも扉が開けられるかもしれないって」
緊那羅が言うと摩訶不思議服を纏った面々が驚きその他の面々はきょとんとした顔をした
「ばっ…!!」
「なに…!!」
「きん…!!」
摩訶不思議服の面々が単語にならない言葉を次々を口にした
作品名:【第十一回】きみの て 作家名:島原あゆむ