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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【第十一回】きみの て

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ゴン

何か固いものに勢いよくぶつかった音が廊下に響く
「…ッ~;」
矜羯羅と慧光が制多迦の両脇に抱えられながら頭をおさえる
「…めん;」
制多迦が申し訳なさそうに謝った
「前見ないで走るとあぶないよ制多迦様」
間一髪制多迦の方から降りて壁激突を免れた鳥倶婆迦が小走りでやってきて制多迦に言う
「…うだね;」
両脇に抱えていた二人を降ろして制多迦が頭をかいてヘラリと笑った
「抱えて走るなら責任持ちなよ」
スパンっと軽快な音をさせて矜羯羅が制多迦の頭を叩いた
「…何笑ってるのさ…」
叩かれたのにめちゃくちゃ嬉しそうな制多迦を見て矜羯羅が聞く
「…んがら最近玉じゃなく手で叩いてくれるのが嬉しい」
「は?;」
制多迦が言うと矜羯羅が自分の手を見た
「そうなんナリか?」
慧光が頭をおさえながら矜羯羅に聞く
「…別に…」
手をキュッと握って矜羯羅が言う
「…何さ」
反対の手を制多迦が取って首を振った後ヘラリと笑った
「…んがらは全部見ても僕をおいていかないでくれた」
制多迦が静かに言う
「…んぶ…初めからずっと見ていたのにずっと側にいてくれてずっと守っててくれた…僕が僕だから矜羯羅は苦しかったんでしょ?」
両手で矜羯羅の手を包みながら制多迦が悲しそうに笑った
「…から願ったんだよ…僕が僕じゃなくなるようにって…怒られたけど」
矜羯羅が俯いたまま黙って制多迦の話を聞く
「…もごめんね…僕はもう少しだけ僕でいたい…【時】が来るまで僕はこのまま僕のままでみんなと…矜羯羅といたい」
「ちが…!!」
矜羯羅が顔を上げ最初に見たものは制多迦のすぐ後ろで弧を描く唇だった
「指徳…!!」
制多迦のすぐ後ろにいたのは指徳そして逆光で黒く見えるもう一つの影
「つかまえた」
どこか面白そうに指徳が制多迦の肩に手を置いた
「今度は…制多迦…お前が鬼だよ…」
「やめろ指徳ッ!!」
指徳が制多迦の前に手をかざすのを見た矜羯羅が叫ぶ
「見ちゃ駄目だ制多迦ッ!!」
矜羯羅の声を聞きながらも制多迦の目は指徳のかざした手の内にある玉を見てしまっている
「制多迦…ッ!!」
「制多迦様ッ!!」
矜羯羅と慧光がめいいっぱいの声で制多迦を呼ぶ
「さぁ…鬼さんおはよう」
矜羯羅の手を包んでいた制多迦の手から段々と力が抜けていくのを矜羯羅が感じ取って制多迦の手を掴んだ

「…めんね…」