【第十一回】きみの て
スパコ------------------------------------------------ン…!!!
制多迦の振り下ろそうとしていた棒より早く竜のデコピンが制多迦の額にヒットした
「コイツらの言う【制多迦】はお前じゃないってさ」
そのまま指をぐぐっと押し付けて竜が言う
「でもお前も【制多迦】なんだ…だから」
空いている片方の手で竜が制多迦の頭についている宝珠に触れるとバチバチっと電撃のようなものが竜と制多迦を包んだ
「竜!! 制多迦様ッ!!」
腕に矜羯羅を抱えた慧光が叫ぶ
「消したりはしない…【時】がくるまで…まだ…ッ…」
顔をしかめつつも竜が言う
「俺と共に眠ってくれないか…」
ふっと竜が笑うと制多迦の目が見開いた
バチバチバチッ
赤い電撃が迸り光りが視界を奪った
「竜!! 制多迦さ…!!」
その電撃を飲み込んだのはやわらかく暖かな光り
「制多迦様-------------------------ッ!!」
慧光の叫びが響いてからしばらくして光が収まった
「…竜」
鳥倶婆迦が言うと慧光が眩しさに閉じていた目を開けそして止まる
「せ…」
「大丈夫だ」
竜が腕に抱えた制多迦の顔を鳥倶婆迦と慧光に見せた
「…おいちゃんの好きな制多迦様…?」
鳥倶婆迦が聞くと竜が頷く
「じゃぁ…もう片方の制多迦様は?」
慧光が躊躇いがちに聞くと竜が制多迦の頭の宝珠を指差した
「…宝珠…?」
鳥倶婆迦も聞く
「今の俺の全力ではこの中に眠らせることしかできないんだ…そして俺ももうこの姿ではいられなくなる」
ゆっくりと腰をかがめて制多迦を床に降ろしてもう一人の制多迦を眠らせたという宝珠を制多迦の頭から外した
「俺はこれからこの宝珠と残りの力でこっちから扉を閉ざす」
竜が制多迦の宝珠を持って立ち上がった
「今空は危険だ…」
フォォオオオオオオオオオオ…ン
竜が言うとほぼ同時に響いた鳴き声にも聞こえる音
「宮司…」
鳥倶婆迦が言う
「でもそしたら京助…」
「そこでお前たちに頼みがある」
聞きかけた慧光に竜がにっこりと微笑んだ
作品名:【第十一回】きみの て 作家名:島原あゆむ