舞うが如く 第五章 10~12
郭門に進攻してきた政府軍は、
中村半次郎と小笠原謙吉の率いる薩摩・土佐の精兵部隊でした。
最新式の装備と共に、郭門に向かって
こちらも勇網果敢に突進を繰り返してきます。
この攻撃に対して会津側は、
蜷川友次郎・田原助左衛門らがまず門を開いて
迎え討ちに出撃をします。
続いて田中土佐の指揮のもと、幼少組隊長・佐瀬清五郎や、
砲兵隊長・井深数馬、遊撃組頭、馬場清兵衛らが、各々の手兵を率いて
適兵たちに突っ込んでいきました。
しかし銃を持つ者は極めて稀で、
武器のほとんどが刀と槍だけという軽装備です。
たちまちにして、敵の狙撃に遭い死傷する者たちが続出をしました。
この日における、この甲賀町口郭門での戦いは、
会津戦争においての、最大の激戦地のひとつになってしまいました。
尊之介を抱きささえた琴と、
自害から命を取り留めた白虎隊士を背負った作蔵が
夜半になってから、ようやくこの
甲賀廓門にたどり着くことができました。
敵と味方が入り乱れた状態で、往来を埋め尽くして横たわる
あまりもの屍の数に、琴が言葉を失ってしまいます。
足元を流れておびただしく溜まる鮮血は、おりからの雨にも混じって
あたり一面を血の池のごとくにかえてしまい、
なおも流れとなって街道に溢れています。
熾烈を極めた攻防の末
、会津側によって死守されたこの甲賀町廓門は、
やがて迎える9月23日の落城の日まで、
会津側の手により、終始守り抜かれることになります。
作品名:舞うが如く 第五章 10~12 作家名:落合順平