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舞うが如く 第五章 10~12

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 一団の兵とともにこの門の近くまで来てみると、
味方の兵が、郭門に堰とめられたまま溢れているのが見えました。
口々に「門を開けろ」と怒号しています。
堅く閉ざされた城門の前に屯しているのは、
みな戸ノ口や滝沢で戦ってきた会津藩の守備兵たちでした。
郭門守衛の兵士たちが公命と称して、僅かに小門を開いただけで、
一人ひとりを調べながら 城内に入れている様子が見えてきました。



 郭門前に詰めかける兵士の数は、時間と共に増え続けます。
藩老の田中が、藩兵たちを押し分けて門に近づくと、
大声をあげて開門せよと命じますが、
守衛たちは公命を盾にとって、門を開けようとはしません。



 田中がさらに声を張り上げました。



 「たとえ公命を犯してでも、
 わが兵を敵の手にゆだねる事はできない。
 お前たち、守衛を叩き斬ってでも門を開けるみせる」



 と大音響で叫びます。


 それを聴いた藩兵の数人が
一斉に刀を抜き放って郭門へ殺到をしました。
この事態に守衛が恐れて退たために、
ようやくにして大門が解放されることになりました。
門前に足止めをされていた兵士たちは、ことごとく門内に入り込み、
おのおの守備につきましたが、
その総数は4~500名にものぼります。



 田中土佐が兵士たちに矢次ぎ早に指示を飛ばします。
近所の藩士宅から畳を運ばせて、これを門前に積み始めました。
しかし僅か数畳を横に並べたところへ、
早くも敵弾が飛来してこれを貫きはじめたために、
とても防禦の役にはたちません。