小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

舞うが如く 第五章 6~9

INDEX|3ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 


舞うが如く 第五章
(8)戸ノ口原にて、



慶応四年の(一八六八)八月二十二日。
石筵(いしむしろ)を破り、次いで猪苗代城を陥れた政府軍の進攻はす早く
すでに戸ノ口にまで到達をしてきました。
戸ノ口原は、ほぼ一里余にわたる荒涼とした平地です。
丘陵が僅かにあるのみで、寡兵をもって闘うのに
はきわめて困難な地形ともいえました。
『背後にある十六橋の破壊まではなんとしても持ちこたえよ、』
そう厳命された守備部隊の総勢力は、
この時点ではわずかに200名余りにすぎません。



 作蔵と共に遠見の櫓(やぐら)の上に立った琴が
眼下に屯する、竹子や優子たちの婦女子隊のほうを振り返ります。
一方のはるか彼方からは、敗走をしてくる同盟軍と
それを追撃する政府軍の姿が、丘陵地のあちこちから、
時と共に湧き上がるよう増え続けてきます。



 後方に構えた味方の陣営から、軽いどよめきがあがりました。
整然と進軍してきたのは、
十六歳から十七歳の少年たちで構成されたばかりの
白虎隊士中組の二番中隊でした。
直前の軍政改革で、後方の予備部隊として
編成されたばかりの部隊ですが、
本隊と主力部隊のほとんどを国境周辺に全て配備していたために、
急きょ、藩主の護衛組織として戦場に動員されてきたのです。




 手にしているのは、ヤ―ゲルと呼ばれる洋式後装銃です。
しかしながらその威力は、
政府軍の持つ新式の連発銃には足元にすらおよびません。
守備隊が手にしている武器も、その大半が槍か弓矢でした。
火器も、旧式の野戦用大砲が三門に、あとは火縄銃のみというあり様でした。
前方から押し寄せてくる政府軍の数は、
時間と共にさらに増え続けます。