無効力恋愛
けれど、どうしようもない衝動が、せめてもの代償を求める。
ベッドの下。引き出しの袋。理人の病巣。
絶対に気付かせない。
これは、理人の瑕(きず)だ。こんな感情(きもち)は今だけのものだから。誰にも気付かれず消えていけばいい。そうしたら捨てられる。痕跡を消せる。
何食わぬ親友の顔を続けるために、理人は沢山嘘をつく。暗がりの中で自分で汚した手を見詰めた。それでも。
それでも君が大切だ。
俺はこんな有様になっているよ。イカレた自分を、これでも治そうとしているよ。気付かれないように、煩わせないように。見てるだけなら許されるだろうか。君は、許すのだろうか。本当に気付いていないのだろうか。
――ねえ、十貴?
――お前にならいいかなあ、なんて。一体どんなつもりで言っているの?
シャッターを押して切り取った、何十人もの十貴の影が、引き出しの奥で慰み者になっている。それを知っても、同じ台詞が言えるだろうか。
理人はグラウンドに立つ十貴を思った。
ほんとうの君は、こんな歪んだ想いの淵など知らぬ気に、天と地の間に、王者の如く在(い)るだろう。
幻を描いてさえ切なくなる胸を持て余して、理人は十貴に会いたいと思った。……会っても仕方ないのだけれど。
…… To be continued