さかなととり
道路沿いの道なのであるが、道路を車が通る様子もなく、遠くの方には逃げ水がある。
逃げ水と言うのは、暑い真夏の道路にあるはずもない水溜りがある様子、まあ、言うなれば蜃気楼の類である。
が・・・、そんなものを見たのは何年ぶりだろうか?と逆に自分に質問をしてしまう。
さかなは、東京育ちで母の実家は博多であったが、博多も東京もどちらも田舎とは程遠い環境である。
きっとみたのは、修学旅行で行った北海道なんかであろう。
とにかく、蜃気楼が道路に出てくるくらいのひどい暑さ。
照り返しにやられそうになる自分がそこにはいた。
高千穂と言う観光地で買ったペットボトルの水は、もうすぐなくなりそうになっている。
(やっばいよな。1L買うべきだったよ。でも、こんな歩くなんて思ってなかったし・・。)
歩くとなると、考えることはいろいろと出てくる出てくる。
ぼわんと漫画のような言い回しで言うと、浮かぶのは白いぷりんとした形のいい、二つの
(真理子、いい胸してたよな・・・。)
道路沿いに広がる田園風景。
水の張られた田んぼに、緑の稲が生い茂り良い、田舎らしい匂いを漂わせている。
鷺と言うんだっけか?
記憶の片隅にこびり付いたテレビで仕入れた豆知識を存分に生かし、目の前で田んぼに立ちすくんでいる白い背の高い鳥にちらりと
視線を遣りながら鷺だ鷺だと小さく頷いて見る。
げこげこと、蛙らしい声も偶に聞こえてきて、さかなに歩くことを飽きさせることはなかった。
道路を通る車が、トラクターだけと言うのも少し笑えて来る要素でもある。
ガタガタガタと機械音を鳴らしながら横を通り過ぎていくトラクター、水中で競争したらさかなななんてもう、何メートルも先にいるだろうと考える。
実際には、トラクターが水中で動くわけもないのだが、そうしょうもない事が考えられるのが、ここの醍醐味なのかもしれない。
一息つくついでに立ち止まると、びゅんと強い風がさかなを押すように吹いてきた。
それに乗ってくる冷たい風。
(台風の残りかな?)
歩きながら見上げた空には、小さな白い雲を残してすべての雲が流されていた。
真っ青な空。
額から流れ落ちる汗を袖口でぬぐう。
「・・・・あっつい。」
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