舞うが如く 第五章 4~6
舞うが如く 第五章
(5)戦禍が迫る
奥羽越列藩同盟に参加した各藩も、当初は、
新政府が設置した奥羽鎮撫総督に従っていました。
また、列藩同盟が結成された時点では、すでに江戸幕府は消滅していますので、
列藩同盟を旧幕府側勢力として扱うことには無理がありました。
密かに江戸まで足を延ばしてきた作蔵と、その5人の仲間たちが、
琴のもとに戻ってきたのは、すでに5月も半ばを過ぎてからのことでした。
同盟軍側は、直ちに白河城を制圧してここを防衛の拠点と定めます。
しかし薩摩藩士・伊地知正治が率いた新政府軍が、
数日にわたる激闘の末、同盟軍からこの白河城を奪還してしまいます。
以降、この白河城をめぐって双方の長い攻防戦がはじまりました。
「近藤さんはすでに処刑をされたそうですが、
沖田さんは、江戸のいずこかに潜伏して療養中と聞きました。
また、残った新撰組の隊士たちとともに、
土方さんが、会津に進軍中との噂もあります。」
琴の不安を察した作蔵が、別の話を切り出しました。
「江戸警護の職を解かれた新徴隊
(清河によってつくられた浪士組の江戸での名称)は、
房総や南関東で新政府軍と交戦しながら、いまは庄内藩とともに、
北上中と聞きおよびました。
兄上の良之助さまは、ご健在にございます。」
「兄上が、ご無事とは。
それはまた、なにより。」
「また、官軍(政府軍)の別動部隊が
海路より、常陸国(茨城県)に上陸すると言う噂もあります。
いずれのうちに、小名浜周辺で仙台藩と、
激突と相なるかもしれません。」
「敵がニ手より北上してくるということですか、」
「白河口の戦いでは、
仙台藩と、会津の連合軍2500の守備隊が、
わずか700の官軍に大敗を喫してしまいました。
白河城も追われ、
体勢の立て直し中の模様です。」
「なんと、
圧倒的に優位なはずの守備隊が、
わずか700の兵に敗れ去るとは・・・」
琴の落胆を遮るように、
背後から八重が声をかけてきました。
作品名:舞うが如く 第五章 4~6 作家名:落合順平