クリスマス・ディナーに、蟻が ・・・
フランス料理のフルコース、美味しく、そしてボルドーの赤ワインを飲み、少し酔っ払った。涼太は堪らず漏らす。
「俺達、最初からもう一度、やり直すことできるかな?」
真奈は香りの良いコーヒーに一粒のシュガーを入れる。そして言う。
「あなたバカね、一度外れた線路は決して交わらないのよ。
それに今のすべてを捨てる覚悟はないくせに、私に浮ついたこと言わないで、どちみち奥さんの所に帰って行くのでしょ」
そう吐いて、スプーンでぐるぐるとかき混ぜている。
そして、ポロポロと涙を零し出した。そして、過去を吹っ切るかのように言う。
「いい、私は仕事に一途な男の末路を見たいだけなのよ。
どんな花を咲かせて散っていくのかなって・・・・・・だからもっと、ド真剣に仕事に取り組みなさいよ」
涼太は「わかった、そうするよ」と呟きながら、そっと隣の席の綺麗なナプキンを渡した。真奈はそれを受け取り、涙を拭き取った。
こんな若干重いクリスマス・ディナーだった。しかし、涼太と真奈、互いに思うところを確認し合う有意義な一時だった。
作品名:クリスマス・ディナーに、蟻が ・・・ 作家名:鮎風 遊