クリスマス・ディナーに、蟻が ・・・
涼太は真奈を、娘の美月が待つマンションへ無事送り届けた。
そしてタクシーで、家路へと急いでいる。そんな途中に真奈からメールが入った。
『蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻蟻』
それは、こんな『蟻』の字がただ並んでいるだけのものだった。
涼太はこれは何だと思ったが、真奈の言葉を思い出した。
「私はちっちゃな蟻よ、だけど、ちくりと刺す刺客。涼太さんのために蟻十匹分くらいの働きはしてきたでしょ」
涼太は真奈のやつ、『蟻』を並べて、また嫌みなメッセージを送ってくるものだと思った。
そして一匹、二匹と、その『蟻』という文字を数えてみる。
確かに十匹いる。
その瞬間だった。涼太に電撃が走った。
そして、真奈の今の気持ちに気付いたのだ。
それは、蟻が十匹・・・・・・『ありがとう』だと。
おわり
作品名:クリスマス・ディナーに、蟻が ・・・ 作家名:鮎風 遊