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瑠璃の海、琥珀の空。

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 四人でディナーを食べた日の帰り、桃子が気を利かせて二人きりにさせてくれた日の帰り、カイムは言った。
「僕はシューヤさんは好きだけど、トーコちゃんがちょっと苦手だ」
 私たちは人気のない夜道を、ふらふらと寄り添い、絡まり合いながら歩いていた。
「トーコちゃんと一緒に居るマリナを見てると嫉妬してしまうから」
「どうして?」
 カイムの肩に頭を預けて甘えながら私は訊いた。
「だって、マリナ、僕には見せないような顔をトーコちゃんにするんだから。トーコちゃんに会うときはいつも、僕は僕の知らないマリナを見せ付けられて、戸惑ってしまうんだよ」
 私がローザに抱いているような感情を、カイムも桃子に感じているのだろうか。
 カイムが知っている私より桃子の知っている私の方が圧倒的に多い。それは私の方だって同じだ。ローザが知っているカイムを、私はひとつも知らない。ローザと一緒にいるときのカイムがどんなふうなのか、私には想像さえできないのだ。
 それが私を途方もなく寂しくさせる。別々の人間である以上、すべてを知り尽くし、理解することなど不可能であるのだと、思い知らされる。
 けれども私たちはそんな寂しさと上手く折り合いをつけて、生きてゆくしかないのだ。