スターブレイダ―ズ
それからシンジの猛特訓が始まった。
公式戦まで残り2週間、それまで出来る事と言えば特訓以外になかった。
SSB協会に写真を電送し、登録を済ませると翌日の早朝にライセンス・カードが自宅に届き、シンジは正式にナイト・クルーに登録された。
そしてスター・キャッスルを宇宙に飛ばしてレナとチサトが見守る中で燃料は1人分、そして武器弾薬もセーブして特訓を行った。漆黒の闇の中に白い機体がぎこちないながらも飛んでゆく、かつてシンジは父からスター・ブレイドの操縦方法を教わっていた。よく小さい頃から乗せてもらった事もあるので大体分かるが実際操縦するとなると別だった。操縦桿を動かしても思い通りに動く事が出来ず、真っ直ぐに飛ぶ事すら危なかった。
しかしシンジの上達振りには目にあまる物があった。ナイトに乗って5日となるとある程度操れるようになってきた。そして戦闘においても悪くない成績を抑えた。宇宙に張られたターゲットパネルにある程度ヒットようになってきた。
「すごいすごい、これなら勝てるよ!」
「そりゃそうよ、シンジは本気出せばすごいんだから」
「えっ?」
チサトは普段文句ばっかり言っているレナが素直に褒めているのが気になった。
「ま、まぁ……、あいつだってやる時はやるって事よ、チサトちゃんだってお兄ちゃんを信じてるんでしょう?」
レナの目は泳いでいた。
チサトは付き合いが長いので分かるがレナは都合が悪くなると目が泳ぐ癖がある、心の内を理解しているチサトはあえて言った。
「うん、私も信じるよ」
それだけ言うと2人はシンジの練習を見守った。
それから数日後、ついに戦いの日がやって来た。
スター・キャッスルは宇宙に向けて飛び出しすと決戦の舞台であるヴィーナス・165に向けて発進、格納庫ではスター・ブレイド01に乗ったシンジが待機していたが初陣を前にして緊張しているのであろう体が震えていた。
『シンジ君』
「うおっ? 小父さん?」
目の前のモニターにホークの顔が映し出された。
ちなみにホークは病院から許可を取り退院し、今は司令室であるオペレーター・ルームでこのスター・キャッスルを操縦している、
『準備はいいか?』
「あ、ああ……」
『シンジッ!』
すると今度はレナが映し出される、
『分かってると思ってるけど、スター・ブレイダーズに明日が有るか無いかはアンタ次第なのよ、絶対勝ちなさいよ!』
『お兄ちゃん、頑張って!』
チサトとプロメテスも顔を出しシンジを応援する、するとシンジを縛り付けていた緊張の糸が解け、安らかな気分になった、やがてスター・キャッスルは戦いの場にたどり着いた。すでに対戦相手もここに来ていた。
「スネーク・チャクラム」
それはまるで緑色の蛇がトグロを巻いたような戦艦だった。
戦艦の船首には円いチャクラムの中に1回り小さい黒い蛇が尻尾を咥えて円くなって描かれていた。それはこの対戦チーム、スネーク・チャクラムの紋章だった。
すると1体のナイトが飛び出してきた。
蛇を模した船首に胴の長い蛇が一度中央から折られ羽が生えたようなナイトで胴体にはスネーク・チャクラムの紋章がペイントされている。
『シンジ君、スター・ブレード01射出準備完了!』
遠隔操作でハッチを開くと出撃準備が完了した、するとシンジは息を吸い込み目を強く見開く、
「スター・ブレイド01、行くぜッ!」
シンジは操縦桿を握ってエンジンを全開にする、スター・ブレイド01は大宇宙に飛び出した。
すると目の前に直径10キロはある緑色のワイヤー・フレームで作られた球体状のバトル・フィールドが出現、2機のナイトがバトル・フィールドに入るとアナウンスが入る、
『これより、スター・ブレイダーズ対スネーク・チャクラムの試合を開始しする!』
アナウンスの号令にシンジは自分の心臓の鼓動が大きく感じた。そして固唾を飲み込むと操縦桿を握る手に力が入った。
『SSB、スタートッ!』
そして試合が開始のブザーが鳴り響いた。
先に仕掛けたのはウロボロスの方だった。開いた蛇の口から砲門が出てきてレーザーが発射された。
「うわあっ!」
レーザーがスター・ブレイドにヒットすると操縦席に設置してあるエネルギー・ゲージがどんどん減ってゆく、先にこのゲージが0になった方が負けとなる。
一方、ウロボロスはエンジンを前回にしながら突き進んできたナイトであるウロボロスのクルー、ジャース・エクゾニックは手応えのない対戦相手に戦いを楽しんでいた。伸びきった髪をうなじ辺りで束ねて男なのに三つ網にした30後半の男だった。
「シャーッ、シャッシャッ! スター・ブレイダーズも今じゃこんなもんかぁ? 手応えが全くなさ過ぎるぜぇ!」
ジャーズは右手の操縦桿を前に押す、するとウロボロスの尻尾の先端が左右に分かれ、ジェットフック付きのワイヤーが飛び出て着てスター・ブレイドの機体に絡まった。
「くたばれ!」
ジャースが手元の赤いボタンを押すとウロボロスのワイヤーを伝ってショック光線が発射されスター・ブレイドを攻撃した。
敵の攻撃はスター・ブレイドに深刻なダメージを与えた。
「うわあっ!」
ライフ残量が減ってゆき、『Warning』のサインが出た。
スター・キャッスルではレナやホーク達がこの映像をモニターで見ていた。
「これじゃサンドバックじゃない! 酷すぎるわ!」
「お兄ちゃん……」
「くっ……」
3人は悔しさに嘆いていた。
蛇の生殺しのように相手を痛めつけ、手も足も出せないスター・ブレイドの姿を見て勝ちを確信したジャースはまるで顎が裂ける位口を開けて笑いだした。
「シャシャシャシャッ! そらそら、降参しろこのクズチームがぁ!」
情け容赦なくウロボロスからのショック光線が放たれ続けスター・ブレイド01は火花を散らした。
だがシンジはまだ諦めてはいなかった。歯を軋ませて目を開くと操縦桿を握り閉めた。
「調子に乗るんじゃねぇ――ッ!」
シンジはレバーを押すと噴射口が火を噴いて機体が突進した。
「うおおお―――っ!」
シンジはライフ・ゲージが少ないのにも関わらず全速力で敵目がけて突進した。
攻撃を食らったまま突進してくるスター・ブレイド01をみてジャースは心を乱された。
「な、何だとっ?」
ジャースは慌ててレーザー砲を撃ちまくったが全く当たらなかった。
スター・ブレイド01はそのままウロボロスに体当たりをするとエネルギーが逆流し、自らの機体にダメージを与えた。
「ギャアッ!」
ウロボロスは一瞬だが動きが止まった。途端スター・ブレイドを拘束していたワイヤーがほどけた。
スター・ブレイド01は大きく旋回し、動きが止まっているウロボロスに向かって全砲門を開いた。
「よくもやってくれたなっ、倍にして返してやるぜ――っ!」
シンジは全ての攻撃システムを起動、ウロボロスに照準を定めた。
スター・ブレイド01からありったけのミサイルやレーザーが放たれると全弾命中、ウロボロスのライフ・ゲージは一気に0となった。
「うぎゃぁあ――ッ!」
ウロボロスは大爆発してフィールドから消えた。