スターブレイダ―ズ
それからと言うものスター・ブレイダーズの練習は上の空だった。
レナはシンジと距離を取り大して話さなくなった。
シンジも何とか謝罪をしようと思ったがレナは相手にしようとせず、互いの心はすれ違った状態で運命の日を迎えてしまった。
クラスチェンジ・バトル決勝戦、スター・ブレイダーズ対ブラッディ・ムーンの戦いの火蓋が切って落とされた。
ブラッディ・ムーンの三日月に両翼が生えたような母艦『ツクヨミ』から5機の『ゲッコウ』が発進、リーダーが乗る1号機を筆頭に左舷には2号機と5号機、右舷には3号機、4号機と編隊を組みバトル・フィールドに飛び込む、ちなみにカイトの操るナイトはゲッコウ5号機となる。
そしてスター・キャッスルからもスター・ブレイドが出撃しようとしていた。
「スター・ブレイド01―X、行くぜ!」
先陣を切るシンジ、
「スター・ブレイド05―V、行きます!」
「スター・ブレイド03―F、発進!」
チサト、ビアンカが続く、
次はシーラとレナなのだが……
「レナ様、行きましょう」
しかしレナは反応が無かった。
「レナ様っ!」
「えっ? あ、ごめんなさい……」
レナは気持ちを切り替えると発進スイッチを入れる、
「スター・ブレイド02―W、テイクオフ!」
「スター・ブレイド04―A、出陣!」
2人が飛び立つとそれぞれチサトとビアンカの横に着く、シンジを中心とし編隊を組むとバトル・フィールドに飛び込んだ。
『クラスチェンジ・バトル決勝戦、開始っ!』
アナウンスの号令と供に試合が開始が宣告される、なおこの中継は生放送で全宇宙に放送される、多くの観衆が見守る中で己の名誉と力をかけた戦いが今始まった。
互いのナイトは同時に散開、一騎打ちとなった。
シンジ達は向こうの戦力をある程度調べておいた。
ナイトの武装や装備はスター・ブレイダーズとほぼ性能は変わらない、しかし予選も本戦も全ての試合がカイトのゲッコウ5号機しか出ていないので詳しい詳細は分からなかった。
試合開始から15分、劣勢にたたされたのはスター・ブレイダーズの方だった。
ブラッディ・ムーンはあらかじめ機体の性能とタイプを調べ、巧みな戦術を練った上での十分なシュミレーションを行ったのだろう、しかし物を言わせていたのは経験だった。
機体や装備ならば金をかければどうにでもなるが何をしても思い通りにならないのが時間である、スター・ブレイダーズのクルー全てが初心者、いくらナイトの構造や性能を理解しているビアンカですらSSBを始めて間があまり無かった。
一方ブラッディ・ムーンは殆どが熟練者、カイトでさえ2年前からSSBを始め、こうして大事な試合にでる権利を任されているのだった。
さらに時が流れると戦局に大きな差が出始めた。
各ゲッコウのライフ・ゲージは大して減らず、スター・ブレイダーズのライフ・ゲージは大きく減っていた。
その訳は相手にしている敵のナイトのタイプが全く同じだったからである、つまり高速タイプの02―Wには同じ高速タイプのゲッコウ3号機、攻撃力が高い03―Fには攻撃タイプのゲッコウ4号機、防御力に優れた04―Aには同じ防御タイプのゲッコウ2号機、武装が多い05―Vには武装が多いゲッコウ1号機、そして凡庸性が高い01―?はゲッコウ5号機が相手をしていた。
「このっ」
01―?はレーザー砲を発射した。
しかしそれよりも早くカイトを乗せたゲッコウ5号機は回避、攻撃の隙が出来た01―?をインパルス砲を攻撃した。
「うわああっ!」
機体が大きく揺れてライフ・ゲージがさらに減る、ついに画面に『Warning 』の文字が浮かび上がった。
いつも自分は泣いていた。
言いたい事が言えずに辛い事があるとすぐに根を上げてしまう為に周りから疎ましく思われ虐められる日々が多かった。しかしその度に庇ってくれたのが2人の少年と少女だった。その度に自分は2人に庇われて助けられた。自分は2人をヒーローのように思い一緒にいるようになり、いつしか少女の方に好意が芽生えたが少女の心は少年の方に向いていた。
確かに嫉妬はあったがこの想いは心の底にしまって置こう思った。それが2人の為だと思ったからだ。それから月日は流れ少年の父が死去したと言うニュースを聞いた。いてもたってもいられなくなった自分は少年に会いに行った。
しかし自分がそこで見た物は成長した少年と少女が喧嘩をしている姿だった。隣りでは少年の妹が大泣きしていて少年は自分の腕を?んだ少女の腕を振り払うと少女はその場に倒れた。少女はスクーターに乗って去って行く少年と妹を見るとやがて顔を顰めて両肩を震わせ目から涙を零した。それを見た瞬間自分の中にあった僅かな嫉妬が爆発、やがて憎しみへと変わった。そしていつしか少年に自分が上だと認めさせ、彼女を迎えに行こうと決めたのだった。
「こんな物か……」
カイトはつまらなさそうに吐き捨てる、
自分は精一杯努力したがいつしか自分は彼を超えていると確認した。このまま一気に勝負をかければ自分の方が上だと証明できる、レナは自分を見てくれると思っていた。
「さてと、あれを使うか……」
カイトはゲッコウ5号機のみが持てる秘密兵器を発動させた。
サムライ・ジパングに使ったあの技だった。自分のライフ・ゲージを大幅に削り全エネルギーを一点に集中してとき放つ一撃必殺技の大技、その名も『サテライト・ヘレボリス』だった。
「くらえっ!」
ターゲットをスター・ブレイド01―?に向けて発射する、
白銀に輝くエネルギーが巨大な逆三角形型になり01―?を攻撃した。
敵の攻撃を見てシンジは目を見開いた。
「させるかっ!」
シンジはありったけのミサイルとレーザーが放ってサテライト・ヘレボリスを狙い打つと同時に操縦桿を捻った。
今の攻撃で敵の攻撃の軌道をずらす事に成功はしたがその衝撃を防ぐ事は出来ず、少なかったライフ・ゲージがさらに下がりレーザーを1発でも喰らえばロストの状況になってしまった。
「チッ、やはり難しいな……」
カイトは舌打ちをした。
この攻撃は強力で射程範囲が広いのが長所だが標準をロックする事ができずに手動で発射するしかないのが欠点だった。しかも攻撃後の反動が大きく大幅に体力を消耗する、
しかも力の差を見せ付けたかったカイトは焦りすぎて、タイミングを見逃してしまったのである。あともう少し接近すれば確実に勝利していた。
『何をしている、使用許可を出した覚えは無いぞ!』
モニターに肌と髪の黒い30代後半の男が映った。彼はブラッディ・ムーンの監督のロイド・ソーマで、サテライト・へレボリスを使用するには彼の承認が必要だった。
勝手に約束を破ったカイトに激を飛ばす為にロイドは無線を入れたのだがカイト本人は自分の目的の方が大事だった。
「すみません監督、今回だけは好きにやらせてください」
『お、おい、ちょっと待っ……』
カイトは無線を切ると目の前の敵ナイトに鋭い眼光を向ける、
一方シンジはフリーズしてしまったシステムを何とかしようとしていた。