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スターブレイダ―ズ

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第7話 勇者への道



 翌日から練習は鬼気迫る物が有った。
 シンジからはプレッシャーが完全に消えたが今度はレナの方に問題があった。練習中にボーっとする事が多くなりミスも多くなった。
 団体練習後、スター・キャッスルのオペレーター・ルームではビアンカ達が事情を聞いていた。始めは言いにくそうだったがシーラの説得で口を割ったのだ。
「そうだったの、カイト君が……」
 ビアンカは面識はないがカイトの事は知っていた。
 ちなみに今回の夏祭りの事は全てビアンカが仕組んだ事だった。
 この決勝戦の最大の鍵となるのはシンジとレナで2人の力を引き出す為の訓練でもあった。その為にシーラに口裏を合わさせ用事が出来たと伝え、チサトには風邪を引いたと嘘を付かせたのだった。しかしまさかこれが裏目に出るとは思わなかった。
 しかもカイトにレナがサテライト・ランドに行ってる事を話したのは兄のハルだったと言う、ハルもあまりカイトの事を知らないので思わずレナの居場所を教えてしまったと言うのだ。
「ハル君に口止めしておけばよかったわ」
 ビアンカは顔を顰めた。
「しかし、シンジ様とレナ様のかつてのご学友が次の対戦相手だなんて……」
「レナお姉ちゃん、もしかしてあっちのチームに行っちゃうの?」
「えっ?」
 チサトは今にも泣き出しそうだった。
 レナは表情を曇らせて顔をそむける、レナ本人もその事が昨日の夜からの気がかりだった。
 すると扉が開くとシンジが入って来た。
「何だよ、何話してるんだ?」 
「お兄ちゃん、お姉ちゃんが別のチームに行くって……」
「あっ、それはね……」
 レナはあの話は断るつもりでいた。その事を話そうとした瞬間、
「ああ、いいんじゃねぇの?」
「えっ?」
 周囲はシンジを見る、一間置いてシンジは続ける。
「そんなん自分が決めりゃいいだろ、残りたきゃ残ればいいし、行きたければ行けばいいだろ」
「シンジ様、そんな言い方は……」
「だってそうだろ、こう言うのは自分の問題なんだ。人が決める権利は無いだろ」
「でも……」
「まぁ、別にレナなんか居なくても対して困らねぇけどな」
「なっ?」
 今の言葉にレナは細い眉を釣り上げる、
「ちょっとシンジ君、言いすぎよ」
「だってそうじゃないっスか、いつも口うるさいばかりで騒がしいだけだし、いっそ居ない方が清々しますよ」
「シンジッ!」
 レナは足音荒くシンジに近づくとその顔に思い切り平手打ちをかました。
 鈍い痛みがシンジの左頬に走り、シンジは赤く腫れた箇所を抑えた。
「何す…… っ?」
 シンジは思わず目を見開いた。
 何とレナの大きな瞳から涙が流れていたのだった。
「………」
 レナは何も言わずにシンジに背をむけるとそのままオペレーター・ルームを出ていってしまった。
 ビアンカはため息を零すと目を吊り上げシンジを見た。
「今のはシンジ君が悪いわ」
「ええっ、何がっスかっ?」
 シンジは分からなかった。
 シンジにとってはいつもと変わらなく接したつもりなのだ。
「言葉には時と場合って物があるのよ、早く謝った方がいいわ」
「な、何でっスか? 俺は……」
「シンジ様っ!」
「お兄ちゃんっ!」
「うっ……」
 淑やかなシーラと内気なチサトも今回ばかりは怒っていた。
 さすがにシンジも何も言えなくなった。

 自宅に戻ったレナはベットの上で枕を握り締め、頭から毛布を被り泣いていた。
 自分でもこんなに泣いたのは久しぶり、中学の時に部活で骨折して以来だった。
「シンジのバカっ、もう知らないんだからっ!」
 どうして止めてくれなかったのか、どうして『行かないでくれ』って言ってくれなかったのか…… 鈍感なシンジにそんな事を言うのは無理だと言うのは分かっている、しかしそれでもレナには言って欲しかったのだ。
「あと3日か……」
 その後レナは泣き疲れて深い眠りについた。
作品名:スターブレイダ―ズ 作家名:kazuyuki