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スターブレイダ―ズ

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 そして全ての仕事が終わり半日たってマンションに戻る、駐車場にスクーターを置いてエレベーターを登り部屋の扉を開ける。
「……あれ?」
 玄関を開けると小さな子供用の靴と大人用の皮靴の2足が並んでいた、1組は妹のチサトのだがもう1組を見るとシンジはため息を零した。
 リビングに向かうと1人の中年の男がチサトと話をしていた。短く切った髪に黒のスーツ姿の少ししゃくれた顎に鬚を携えた中年の男だった。
「やあ、シンジ君」
「ホーク小父さん……」
 彼の名前はホーク・フレイ、父の親友である、
 シンジは向かいに座るとプロメテスからにコーヒーを煎れてもらう。
「やはり、無駄かい?」
「何度も言ってるでしょう、オレは…… SSBには出ません」
「シンジ君、確かにハヤトの事で君達が大変な思いをしているのはすまないと思っている、だが……」
「どうして謝るんですか? ホークさんが悪い訳じゃないでしょう?」
「いや、分かってる。だがハヤトは……」
「やめてください!」
 シンジはカッとなってテーブルを叩いて立ち上がった。
 するとチサトは小さな肩をビクつかせた、ホークは肩を落として息をつく。
「……すまない、君にとってはSSBがどれだけ辛い事かは分かっているはずなのにな」
 だがシンジは抑えてはいるがまだ怒りの炎がくすぶっている。
「あれから2年、私はスター・ブレイダーズを受け継いで戦ってきた。だが私はもう限界なんだ。スター・ブレイダーズは今やかつての栄光は無い…… 今やランク落ちしまくって最下位のスチール・ランクだ」
 シンジは黙ったまま話を聞き入る。
「仲間達もそんなチームに嫌気がさして先日辞表を出してしまいもはや私しかいないんだ。私もいつ引退してもおかしくは無い…… しかし私はスター・ブレイダーズを潰したくは無い、シンジ君頼む、スター・ブレイダーズを受け継いでくれ」
 ホークは立ち上がり頭を下げた。
 チサトは何て声をかければいいか分からず横目でシンジを見る。
 だがシンジは立ち上がってホーク達に背を向けた。
「すいません、ホーク小父さん。オレ…… 疲れてるんでもう休みます」
「シンジ君!」
 シンジは隣の部屋に入ったまま出てこなかった。薄暗い部屋の中で閉じた扉を背に歯を食いしばって目に怒りをたぎらせていた。

 今から2年前だった。
シンジとチサトの父であるハヤト・ゴウ率いるスター・ブレイダーズは最強のプラチナ・ランクの出場が決定した。
しかしある日、乗っていたバスがトラックと衝突、幸い命は取り留めたのだが右手と下半身が麻痺してSSBに出られなくなってしまった。
それを知ったマスコミはある事ない事面白おかしく捏造してた記事でハヤトを笑いものにしてしまったのだった。ハヤトはそれ以来落胆し、最期は病院の屋上から転落し自殺してしまったのだった。
地球に住んでいたシンジは高校を中退し住んでいた家を売り払ってチサトを養う為に通信学習で学卒し、免許を取って今までやってきたのだった。
「お兄ちゃん」
 するとドア越しにチサトの声が聞えてきた。今にも泣きそうな声だった。
「……どうした?」
「ホーク小父さん、帰ったよ」
「……そうか」
 しばらくの沈黙が流れる、
 するとすすり泣く声が聞えてきた。
「チサト?」
「……さっきのお兄ちゃん、怖かった」
「あっ……」
 シンジは先ほど事を思い出すと肩を落として妹に謝罪する、
「悪い……」
「ううん、でも……」
 チサトは口ごもると勇気を出して胸の奥底に溜めてあった思いを口にした。
「お兄ちゃん、本当にこのままでいいの?」
「何がだ?」
「SSBよ。私、お兄ちゃんの妹だよ?」
 シンジは黙りこくってしまったがチサトはさらに続ける。
「お兄ちゃん、SSBが、本当はお父さんが大好きなんでしょう?」
「……悪いな、オレはSSBが嫌いだ。オレ達にこんな生活をさせた親父も憎くてたまらない!」
「ウソ! 私知ってるよ、お兄ちゃんSSBの試合は見ないけど、スター・ブレイダーズの試合だけは見てるって!」
 シンジは目を見開いた。
 そして枕もとに置いてあるテレビを見た。
「お兄ちゃん、私もプロメテスもお父さんの事も今の暮らしは何とも思ってない、でもお兄ちゃんがお父さんの事を憎むのは我慢できない。だって私達家族じゃない!」 
 するとチサトの泣き声が段々大きくなってきた。
 するとシンジはこの時、父がした悲しい事を自分が今チサトに同じ事をしている事に気が付いた。
「チサト、オレは……」
 本当は分かっていた。
 別にSSBが悪い訳ではない、確かに迷惑をかけた父は悪いがスター・ブレイダーズは嫌いでは無いという事を…… 
いつかは自分もスター・ブレイダーズを受け継いでSSBに参加するのだと言う事を思い出した。だがシンジは決心が進まなかった。頭では分かっている、だが年月を重ねて変わってしまった人間はそう簡単には変わらなかった。
 するとその時、シンジのポケットの携帯電話が鳴り響いた、相手はレナだった。
『大変よ、ホーク小父さんが!』
「えっ?」
 目を見開いて顔を青くした。
 ホークが倒れて病院へ運ばれたと言うのだった。シンジは扉を思い切り開けるとチサトを連れて病院へ急いだ。

 シンジはチサトを連れだすとタクシーを拾うと病院にやってきた。
 受付にホークの事を訪ねると今治療を受けているとの事だった。
 そして集中治療室へ向かうとレナが廊下の椅子に座りながら両手を握り締めて無事を祈っていた。
「レナ!」
「ああ……」
レナはシンジを見ると立ち上がり瞳に涙を浮かべて飛びついた。
「シンジっ!」
「落ち着け、何がどうしたんだ? 小父さんは何でこうなったんだ?」
 シンジが聞くとレナは話した。
ホークは駅の電車に乗ろうとした時に突然倒れ、乗客達が病院に連絡を入れレナの兄が勤めているこの病院に運ばれたと言うのだ。
そこへ1人の若い医師が出てきた、シンジより少し年上で長く伸びた髪を後ろで束ねて眼鏡をかけた彼はレナの兄のハル・ハイドだった。彼はこの病院で働いている。
「ハルさん」
「来てたかシンジ、心配しなくてもただの過労だ。3日も寝てれば元気になるよ」
「よかった……」
 シンジ達はホッとため息をついた。するとハルはシンジに言う。
「シンジ、ちょっと中へ入ってくれ。」
2人は病室に入ってゆく、大掛かりな機械と点滴に繋がれて中央のベットではホークが眠っている。
「ずっと上言で言ってるんだ」
 シンジは耳を近付けた。
「ス…… ダーズを…… シンジく…… スター・ブレイ……」
 するとシンジは目を見開き歯を食いしばって汗ばんだ両手を握り締めた。
「シンジ、レナから聞いたよ…… 気持ちは分かる、オレだって最初は医者になるのは嫌だった。血を見るのが嫌いでさ…… だが小父さんはここまでチームの事を心配してくれているんだ。お前はそんな小父さんの心を踏みにじろうというのか?」
「そうよシンジ!」
 扉が音を立てて開くとレナとチサトが入ってきた。
「レナ、病人の前で大声を出すな」
「兄さんは黙っててよ!」
 するとレナはシンジに近づくとシンジの頬に平手打ちをかました。
「何すんだっ?」
作品名:スターブレイダ―ズ 作家名:kazuyuki