スターブレイダ―ズ
第6話 すれ違う想い
それからブラッディ・ムーンの試合をその目で確認した。
サムライ・ジパングは無論1機で出場、ブラッディ・ムーンも同じく1機で出場した。
黒い装甲の2枚の翼に4枚の尾翼、二又に分かれた船首には真っ赤な上弦の月の紋章が描かれたその名も『ゲッコウ』と言うナイトだった。そして試合開始からすぐの事……
「なっ……」
シンジは開いた口が塞がらなかった。
何が起こったのか分からない、しかし一瞬にしてナガミツが閃光に包まれ爆発を起こした。
「な、なによ今の…… 魔法でも使ったの?」
「私達なんか3機で出て、やっとお兄ちゃんが倒したのに……」
「いずれにしろ強敵だな、」
スター・キャッスル内が緊迫の空気に包まれた。
その夜、シンジは眠りにつく事が出来ず、時計を見ると時刻はもう夜半過ぎだった。
原因はサムライ・ジパングが敗北したのもそうだが次の決勝戦は今までの戦いと違う戦いになる、自分が苦戦した相手を簡単に倒してしまう、最悪自分達も負けてしまうかもしれない…… そのプレッシャーがシンジにのしかかっていた。
「くそっ!」
シンジは毛布を頭から被った。
その翌日、
この日はスター・ブレイダーズ全クル―の戦闘練習が行われた。
準備された相手はスクレイア・グループの用意した戦闘プログラムをインプットした無人ナイトで各自のレベルに合わせ1対1の戦闘が始まった。
レナ、ビアンカ、チサトは普通に課題をクリア、シーラも経験不足とは思えないくらいの記録を残した。しかし……
『何をしているんだ、今までの特訓はなんだったんだっ!』
ホークは無線でシンジを呼び出す。シンジだけがロクな結果を残せなかったのだ。
「ゴ、ゴメン……」
シンジは素直に謝った。
それを聞いた仲間達は信じられない物を見た様な顔になった。
シンジは子供の頃から怒れば反抗する意地っ張りな性格で、この年になっても殆ど直っていないシンジの口から『ゴメン』の三文字が飛び出した。
『ど、どう言う事? 明日は宇宙最後の日?』
『いいえ、きっと災いの前触れだわ!』
『お兄ちゃん正気に戻ってぇ〜っ!』
『アラアラ……』
4人の意見が耳に入っているのだろうがシンジは俯いたまま顔を顰めていた。
それから数時間後に訓練は終了しミーティングを行うと解散した。
しかしフレイ親子だけは残って練習に取った映像を鑑賞していた。みな素晴らしい動きだがシンジだけが違っていた。いつもならば荒削りながらも迷いのない動きをするものだが今回のは何かに戸惑っていると言うような動きをしている。
「……やっぱりプレッシャーね、きっと今度の決勝戦の事が頭から離れないのよ」
「何て事だ。時間が無いって時に……」
「こればっかりは仕方ないわよ、父さんなら分かるでしょう?」
「ん、まぁ、それはそうだが……」
ホークは口ごもる、
「しかし、今度の試合は確実にシンジ君の力が必要なんだ……」
「うん、スター・ブレイド01―?の力が試される」
ビアンカはもう一度画面のスター・ブレイド01―?を見た。
一方シンジはスター・キャッスルの自分の部屋で自分専用のマグカップを片手に考え込んでいた。
チサトはすでに休んでいるがシンジは今日の練習で皆の足を引っ張った事が心に引っかかっていた。仲間達は『気にするな』と言ってくれたが本人の中のプレッシャーがさらに重たくなっていた。
「はぁ……」
するとその時、突然シンジの携帯電話に連絡が入った。
『あ、シンジ君、寝てた?』
「いえ、別に…… そんな事ないっスよ、それより何か用っスか?」
『うん、実はね、明日の訓練はお休みにしてみんなでお出かけしましょう』
「え、でも練習は?」
『たまには生き抜きも必要よ、特訓ばかりだったんだし…… 良い気分転換になるわ』
「……はぁ」
『じゃあ決まりね、実は父さんが良い物を貰って来たの』
それはムーン・ベース唯一のレジャー施設『サテライト・ランド』の無料パスポートだった。
それ1枚でその日1日の乗り物がタダになると言うのだった。
『ただ貰った父さんは遊園地苦手みたいだし、それにシーラさんもお家の都合で来られないみたいだから私達4人になるけど……』
「4人? 俺と、ビアンカさんと、チサトと…… 誰か居ましたっけ?」
シンジは指を折り曲げて数を確認する、
するとビアンカは電話越しでも分かる大きなため息を零した。
『……レナちゃんでしょう』
「あ、そうか」
シンジはすっかり忘れていた。
『……全く、じゃあ『あの事』も忘れてるんじゃない?』
「へ?」
その言葉を聞いた時、シンジは目を見開いた。