スターブレイダ―ズ
シンジは安心してベットの上に腰を下ろした。
『そうそう、シーラさんから聞いたわよ。またレナちゃん怒ったんですって?』
「えっ、いつもの事っスよ……」
『……そうかしら?』
電話越しのビアンカの声はどこか不機嫌だった。そのくらいはシンジにも分かっていた。
『……どうやらナイトの事じゃなく女の子の心も勉強する必要があるわね』
「へ? 何の事っスか?」
『何でもない、じゃあおやすみなさい』
それだけ言うと電話が切れた。携帯電話をポケットにしまう、
「……女の子の事なら結構得意なのになぁ」
シンジの言う得意とは三次元の少女ではなく二次元のゲームの事だった。
そして一週間後、ついに運命の日がやって来た。
スチール・ランクにとっては自分達の未来を賭けた戦いが始まろうとしていた。
土星の軌道上では昨日からスチール・ランクの精鋭達が揃っていた。
無論その中には今まで戦ったスネーク・チャクラム、ニードル・スパイダーズ、サムライ・ジパングの母艦も存在していた。
「うおお、いるいる、これ全部参加者なのか?」
「グランド・クロスにコンバット・スコーピオン…… 強敵だな、」
ホークは目を細める、仲間のクルー達もライバルとなるチームを見詰めていた。
「とにかく勝つしかないわ、手を抜くんじゃないわよ、シンジ」
「ん、あ、ああ……」
レナはあれから考えた。
自分に出来る事、それはチームの為に戦う事だった。今は余計な事を考えずに仲間の為にベストを尽くす、それが自分に出来る事だと信じていた。
時刻は午前9時丁度になるとモニターに1人の男性が映った。
彼は大会の主催者でSSB協会会長のシン・グローリー、白髪でオールバック、後ろ髪を一つに束ねた鋭く青い瞳の50代の男性で、首から下は黒いマント、SSBとかかれた星型の純金バッジの留め金が左胸で輝いている。
『待たせたな諸君、これよりクラスチェンジ・バトルを開催する!』
各母艦のナイト・クルー達は士気を高める雄叫びを上げ、ある者はこれから起こる戦いを楽しみ静かに微笑していた。
しかしこの60を越えるナイト・チームの中で本戦に進めるのは僅か8組、優勝しブロンズ・ランクに進めるのはたった1チームだけであった。
クラスチェンジ・バトルの予選はバトルロワイヤルだった。
チームの中から1人とナイトが1機、武器弾薬の補充とエネルギーの充填は自由、しかしパイロット及びナイトの交換は禁止とされた極限状態の耐久バトルだった。
土星を囲むリングの上に通常の10倍を誇るバトル・フィールドが8つに分けられ、ナイト・チームはその中で最後の1人になるまで戦い本戦出場のキップを手に入れるのである、
本戦開始からおよそ10時間経過、ついに壮絶な戦いは終了を向かえ各ブロックで本戦進出を決めたナイト・チーム達が各母艦のモニターに発表された。
本戦進出8組、
1番サムライ・ジパング、2番ブラッディ・ムーン、3番クロスボーン・パイレーツ、4番ウォーハンマー・シャークス、5番グレート・ミノタウロス、6番ダンシング・バタフライ、7番クレイジー・ボンバーズ、そして8番スター・ブレイダーズの以上8組が決定した。
「やったぜっ!」
スター・キャッスルの中でシンジは大いに喜んだ。
予戦に出たシンジは新たな剣である『スター・ブレイド01―X』が1番の輝きを見せていた。
目の前に現れるライバル達を薙ぎ倒して勝ち残ったのである。
「やっぱりタケシは残ったな」
「そりゃスチール・ランク最強なんだから当然じゃない?」
「まぁ、決勝でタケシと戦うのがセオリーっスね」
「そう上手く行くかなぁ……」
タケシの実力を十分知ってるチサトは不安になった。
無論自分でも強くなったつもりだが今あの時の思い出しても肩が震えてしまう、
するとシンジは微笑しながらチサトの頭に手を置いた。
「大丈夫だよ、オレ達もう強いんだぜ」
「……うん」
チサトは微笑して頷く、
するとモニターに本戦の組み合わせが発表された。出場選手が決まり次第、出場チームはコンピューターにランダムで決められるのだ。
第一試合、グレート・ミノタウロス対ダンシング・バタフライ、
第二試合、スター・ブレイダーズ対クレイジー・ボンバーズ、
第三試合、ブラッディ・ムーン対ウォーハンマー・シャークス、
第四試合、クロスボーン・パイレーツ対サムライ・ジパング、
シンジは試合の組み合わせを見て腕を組んでいた。
「本当にタケシとは決勝になったな」
「アンタ、もう勝った気でいるの?」
「決まってるだろ、ここまで来たら優勝だ!」
「そうですわ、シンジ様」
シンジが手を上げると横でシーラが拍手を送る、
一方チサトは苦笑いをするとプロメテスに訪ねる、
「いいのかな、あんなに調子に乗っちゃって……」
するとプロメテスは右手を横に振った。
「試合の日は1週間後の日曜日か…… 次も頂きだぜ!」
クラスチェンジ・バトルは3週に渡って行われるが試合のルールは公式戦と変わらず出場できるナイトは1チーム5機までなら何機出撃しても構わない。
「よし、次も俺が出て……」
「いいえシンジ君、出るのは私達よ」
名乗りを挙げたのはビアンカ、チサト、シーラだった。
「シンジ君、アナタはほんの少しでも練習して欲しいの」
ビアンカは語る、スター・ブレイド01―Xは乗り手の実力を100パーセント再現できる様に設計されている、
しかしシンジはまだ自分のナイトを40パーセントも引き出せていないと言う、
「私と父さんで特訓メニューを考えたわ、これを今日から始めて」
ビアンカの差し出した便箋にはトレーニングのメニューがビッシリと書かれていた。
「これをやれば、オレは強くなれるんスか?」
「それは貴方次第よ」
ビアンカは微笑するが目は真剣だった。それが分かったシンジは強く頷いた。