スターブレイダ―ズ
第5話 開催、クラスチェンジ・バトル
資金援助バトルから数日後、スクレイア・グループのナイト造船所ではスター・ブレイダーズのナイトが生まれ変わろうとしていた。
最先端設備の技術と最高のスタッフが集まりビアンカの設計を元に最強のナイトが完成しつつあった。
「うおおっ、すげぇ!」
シンジを始め他の者達も開いた口が塞がらなかった。
新しく生まれ変わったナイトはシンジ達の想像を遥かに越えていたのだ。
「能力を強化する際に少し形を変えちゃったけど…… まずかったかしら?」
「そんな事ねぇスよビアンカさん、やっぱりすごいっス!」
「本当、とてもスランプだったなんて思えない……」
レナも珍しくシンジに賛成する、
するとチサトが質問をして来た。
「どこがどんな風に変わったの?」
一間置いてビアンカは息を吸うと説明した。
スター・ブレイドの基本性能をベースに各自の持つアキレス腱を補ったのだと言う、各自のナイトは1つの能力では優れているが弱点も幾つか見つかったと言う、
まずはスター・ブレイド02はソニック・シュレッダー展開時はほぼ無敵に近いが1分しか使えない上に遠距離武器が一切使えなくなってしまう、
スター・ブレイド03はパワー重視で攻撃力に長けるが機動性に乏しく最強の武器であるコロナ・バスターを使用すると一定時間フリーズしてしまう、
スター・ブレイド04は03と逆でパワー不足が弱点、
スター・ブレイド05は装備が重すぎて機動力がまるで無いのが欠点だった。
「ビアンカさん、オレのは?」
シンジは訪ねる、
するとビアンカは難しい顔になる。
「これが1番の問題…… 貴方の弱点は器用貧乏って所かしら?」
「はぁっ?」
「ようするにシンジ君の場合どのナイトよりも性能は少し下がるけど1番バランスが取れたナイトなの、でもそれが弱点になってるのよ」
話によるとスター・ブレイド01はこれといった特徴も武器も無い、すなわち戦闘パターンさえ見切られてしまったらそれまでと言う事だった。
「みんなの能力に合わせて調整するけど、実際の所は試して見ないと分からないわね」
ビアンカは5機のナイトを見た。
それから日夜を問わずに造船所ではナイトの改造が進められた。
その一週間後、強化された02から05までのナイトがスター・キャッスルに戻ってきたが01だけはまだ帰ってこなかった。
とりあえず戻ってきたナイトでレナ、シーラ、チサトはそれぞれの練習を行った。
新生スター・ブレイダーズの弱点はナイトの性能だけでなく経験不足だと言う事は承知していた3人の少女達は少しでも腕を上げようと努力を惜しまなかった。
しかしシンジはそんな彼女達を見てジレンマを起こしていた。
「間に合うかな……」
シンジはカレンダーを見る、問題のクラスチェンジ・バトルまであまり時間がない、シンジはさすがに心配になった。
練習が終わり4人はファミリーレストランで食事をしていたのだがシンジの焦りは治まらなかった。
出された料理に手をつけず、コーヒーに映る自分の顔をジッと見つめると眉間に皺を寄せていた。
「シンジ様」
すると隣りに座っていたシーラがシンジの気持ちを察したのかシンジの右手に手を乗せた。
「シンジ様、焦るお気持ちは分かります。ですが貴方のお心が乱れては仲間の士気に関わりますわ」
「シーラちゃん?」
「シンジ様は私達のリーダーです。もっと堂々としていてくださいな、もちろんスクレイア・グループも全力を持ってサポートしますわ」
するとシンジは自分の右手の乗っていた白く柔らかいシーラの手を両手で握り締めた。
「ありがとうシーラちゃん、オレがんばるよ!」
「はい」
シーラの励ましにシーラは元の元気を取り戻しテーブルマナーなどお構い無しに皿の上の料理を頬張り始めた。
「いや〜、今度のクラスチェンジ・バトルは何とかなりそうだな!」
「そうかな〜?」
最早勝った気でいる兄にチサトは首を傾げる、
食事を終えたシンジ達は表に出た。
「ふぅ、食った食った」
膨らんだ腹を擦るシンジ、
そんな兄のみっともない姿を見て妹はため息を零した。
「……はしたないなぁ、ねぇレナお姉ちゃん?」
しかしレナは俯いて暗い顔をしていた。
「レナ様?」
「えっ、何?」
「どうかなさったんですか? お顔の色が優れませんけど……」
「な、何でもないわ。ちょっと考え事してただけ……」
「とか何とか言って、どうせ食い過ぎだろ?」
「お、お兄ちゃん! そんな訳……」
しかしレナは無反応だった。
いつもならここで喧嘩になるのだが今回は違った。レナは怒るどころか目を背けて口をつむいだ。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「まさか本当に? お薬を買ってきましょうか?」
「そ、そうじゃないの、ちょっと疲れただけよ」
するとレナはシーラ達に向かって手を振った。
「じゃあ私、そろそろ帰るね」
「しゃあねぇな送ってやるよ、シーラちゃんもどうだ?」
「あ、はい、有難うございます」
シーラは一礼するがレナは……
「……いらない、自分で帰れる」
「何でだよ? いつもなら連れて帰れってうるさいのに、別に2人も3人も同じ……」
「いらないって言ってるでしょうっ!」
いきなりのレナの大声に皆肩をビクつかせた。レナが怒るのはいつもの事だが今回は鬼気迫る物を感じた。
我に返ったレナは驚く仲間達の顔を見ると顔を赤くして逃げるようにその場から去って行った。
「な、なんだよあいつ……」
「お兄ちゃんがあんな事言うから……」
「お、オレのせいか?」
シンジは自覚が無かった。
レナは幼い頃からシンジと一緒だった。
実家の病院で2人が生まれ、ベットが隣りだった事が縁でそれ以来2人は兄妹のように育ってきた。
勉強する時も遊ぶ時も一緒だった。ビアンカと知り合い、チサトが生まれてもシンジと一番距離が近かったのはレナ本人だった。
しかし今回シーラを見て自分がシンジに何ができるのかと思ってしまったのだ。
チサトはメカの整備、ビアンカはナイトの設計、シーラは資金援助でシンジを助けている、
しかし自分は何が出来るのかと思ってしまったのだった。いつも口うるさくするだけで何もしない、そんな自分からシンジが遠ざかって行く気がしてならなかった。
「あと、一週間か……」
レナはカレンダーを見ると赤いペンで丸く書いてある7月9日を見た。
それは運命のクラスチェンジ・バトル開催の日、しかし一番気になっているのはさらに月末の7月31日の日曜日だった。
この日はクラスチェンジ・バトルの決勝戦の翌日で特別な日と言う訳では無いが彼女にとっては大事な日だった。
「覚えてるかな、シンジの奴……」
レナは目を細めた。
一方シンジはマンションに戻るとチサトを寝かせてシャワーを浴びて自分も床につこうと部屋に戻った。
「ふぁああぁ〜……」
大きく欠伸をすると携帯電話が鳴り始めた。相手はビアンカからだった。
「はい」
『あ、シンジ君? 夜分にごめんなさい』
「どうかしたんですか?」
『シンジ君のナイトは試合前に間に合いそうよ。ただぶっつけ本番になるから体調だけは整えておいてね?』
「本当っスか? 良かった〜……」