御伽物語
幾百年たったある時、また光り輝く子供が生まれました。
人々は憐れみました。
親は嘆き悲しみました。
ああ、この子も魔王の手にかかり死ぬ定めなのか、と。
ですが人々の嘆きを知らずにその子はすくすくと成長し、美しい人へなりました。
そうして、その人もまた、果敢にも、無謀にも、魔王へ挑もうと決意したのです。
とても、とても、とても辛い道のりでした。
誰の助けもなく、たったひとりで戦うのです。
時には月に想いを馳せ、涙のしずくを溢しました。
時には太陽に祈り、悲痛な叫びを洩らしました。
それでも勇者は愛する人々為に戦い続け、漸く魔王の許へ辿り着いたのです。
人々は薄情にも、諦め果て、勇者の眠るべき礎を造っていました。
それを知らずに、勇者は魔王と対峙しました。
魔王の剣は鋭く、勇者の白い肌を浅く深く裂き、ぽたり、ぽたり、血が床を、肌を彩りました。
それでも真っ直ぐに立ち向かうその人の、何と美しいことか!
その凄惨な美しさは魔王をも魅了し、一刻の時を奪いました。
そして、その瞬間、勇者の太刀が閃き、魔王を討ち取ったのです。
魔王は最期の瞬間に勇者へと、微笑み、囁きました。
しかし勇者は勝利の笑みを浮かべることが出来ずに、ただ、ただ涙を零すばかりでした。