御伽物語
そうして、せかいは光を取り戻し、平和に満ち、神は微笑み、
人々は歓喜の歌を高らかに歌い上げました。
魔王はせかいの何処かで勇者と共に永劫の眠りを迎えていました。
顔は安らかに微笑み、安堵さえ覚えているような表情でした。
傍らには美しい女性がくちづけをささげるように絶えていました。
それを見守るように、壁に掛かった女神の肖像が、柔らかく笑んでいました。
そのものがたりを語って、旅人さんはまた遠いところへと去って行った。
僕は今でも考える。
どうして魔王は泣いていたのか。
どうして勇者は泣いていたのか。
どうして女神は笑んでいたのか。
最期に魔王は何を言ったのか。
最後に勇者は何を聞いたのか。
今も女神は見守っているのか。
それは神さえも知らない、遠い遠いところの昔々のこいものがたり。