舞うが如く 第四章 13~14
舞うが如く 第四章
(14)戊辰戦争
中野竹子は容姿は端麗にして、文武両道という才女です。
そんな竹子を一躍有名にしたのが、
「家を覗きに来た若者を薙刀で追った」という逸話です。
江戸で育った竹子が会津若松に来てまず驚いたのは、
家に風呂が無いことでした。
藩士の多くは、百姓や町人たちと一緒に銭湯に通っていた訳ですが、
竹子がさらに驚いたのは、銭湯が混浴であったことでした。
江戸市中では混浴禁止でしたが、
それも全てに徹底していた訳ではありません。
のんびりした地方都市の銭湯ともなると、
混浴に対する意識もおおらかです。
とても耐えられない竹子は、家の中で湯をわかして、
体を拭くことでしのいでいました。
ところが、近所の若者達は、
何とか竹子の裸体を盗み見たくてしょうがありません。
ついには、障子に穴を開けてまで覗きに来る始末になりました。
覗かれていることに気づいた竹子は、着物に着替えると、
若者達へ薙刀で斬り込んでいきました。
悲鳴を上げて逃げる彼らを、
竹子は、本気で斬りすてようとしたのです
街の長老が騒ぎを聞きつけて、びっくりして飛んできました。
老人達が、地面に額をこすりつけんばかりに謝ったとなると、
さすがの竹子も、それ以上は手が出せません。
「二度とこのようなことをしないよう、身を慎むことです」
と諭して、ようやく竹子のお許しが
出たといいます。
作品名:舞うが如く 第四章 13~14 作家名:落合順平