小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

舞うが如く 第四章 10~12

INDEX|6ページ/8ページ|

次のページ前のページ
 



 宿を取った大内宿の囲炉裏では、
どぶろくを酌み交わしながら、そんな昔話をする作蔵の姿がありました。
結局、作蔵は上州の国境を越えても、そのまま5人の仲間を引き連れて
琴と共に会津をめざすことになりました。


 作蔵は、江戸を逃れてきた武士夫婦の忘れ形見です。
日光をめざして、銅(あかがね)街道を北上中に、
運悪く、土地の夜盗に襲われてしまいました。
たまたま通りかかった法神翁が助太刀に入りましたが、
時遅く、父はすでに絶命し、
母も重傷を負ってしまいました。
母親に、しっかりと抱かれていた赤子の作蔵だけが
傷一つ受けず無事だったのです。


 手厚い看護の甲斐もなく、母は三日後に亡くなってしまいます。
作蔵は、地元の庄屋に引き取られて幼年期をすごしましたが、
あまり人には懐かず粗野な性格などもあることから、
のちに山寺へ奉公に出されました。


 このころの、作蔵の武勇伝のひとつに、
夜盗の一味が山寺に押し寄せた時に、
たった一人で撃退させてしまったという逸話が残っています。
山門を閉め切った後に、その屋根の上に登り、
瓦を剥がしては夜盗達に投げつけて、
ついには侵入をあきらめさせたという
はなばなしい活躍の様子が、今でも語り継がれているのです。

 

 この武勇伝がきっかけとなり、
のちに、琴の父親に引き取られることになりました。
兄の良之助と共に、道場でも筆頭の腕前にまで上達しましたが、
琴に試合を挑んで敗れると、
そのまま、消息を絶ってしまいました。



 「何年になるでしょうか、あれから」


 「足かけ5年になろうか、
 いや6年か・・・
 あのころの乙女が、
 ずいぶんと、妖艶になったものである。
 磨きのかかった、実に、いい女っぷりにある。」



 「怒りますよ。」


 「許せ。
 だが、本当の話にあろう」