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舞うが如く 第四章 10~12

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 京都を出た、会津藩の一行は中山道を辿り、
信州と上州の境にある碓氷峠を越えて、安中宿へと下ります。
もう一本の峠越えの道、『姫街道』と合流するあたりから、進路を東へとり、
赤城山の南面を横切り終えると、足尾に向かう
『銅(あかがね)街道』と交差をします。


 赤城山の東端に沿って、足尾山系との谷間を進むこの道は
2年前に琴が、初めて男装をして江戸に向かった思い出の道です。
故郷へむかうわき道を通り過ぎ、東入(そうり)の部落を過ぎたあたりで、
ひと悶着が始まりました。



 馬と荷車の行列の最後方を歩いていた琴が
前方での騒ぎを聴きつけて、足を急ぎます。
行く手を遮るように、屈強な風貌で野武士風の男たち5~6人が
弓や槍を構えて、立ちはだかっていました。



 「命までも取るつもりなど毛頭もない。
 身ぐるみまで剥がすつもりもなければ、
 怪我をさせるつもりもない。
 どうやら、貴重な品々を運んでいる様子と見たゆえ、
 命が惜しければ、その荷車だけを置いて
 早々に立ち去るが良い。」


 一番体格の良い、ひげ面の男が、
長柄の槍を、両肩に担ぎあげて大きな声を張りあげています。
護衛の一人の若侍が、早くも刀に手をかけて、
行列の先頭に踊り出ました。

「それには、およばぬ。」
その手を押しとどめた琴が、にこやかに前に進み出ます。


 「これはお懐かしい・・・
 我が同門の作蔵さまではありませぬか。
 お忘れでしょうか
 いつぞやに、嫁に所望されてお手合わせいただいた、
 琴にございまする。
 このような処でお目にかかるとは、
 またなんぞの、ご用にありましょう?」


 「ほう、これはまた、なんとも奇遇なり。
 誠に、琴である!
 驚いたのう・・・
 江戸から京に上洛したはずで、
 たしか、新撰組で働いているはずであろうが。
 それがどうしてまた、
 こんな胡散臭く、埃臭い連中とともに、
 怪しげな荷車などを引き連れて、
 旅をしておるのだ。」


 「会津へまいる途中です。
 これらの荷物は、琴が、
 一命に賭けて、無事に届けると約束をいたした品々です。
 置いていけと言われても
 聞き入れるわけにはまいりませぬ。
 是非にとあらば、琴がお相手をいたしまするが。
 いかが、なされます?」