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舞うが如く 第四章 7~9

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 「実は、公武合体の盟友であったはずの薩摩藩が
 水面下にて、長州と謀議を繰り返しておるという噂が飛び交っておる。
 西国諸国は、もともとが幕府に抗する外様の諸大名ばかりである。
 第一次長州征討の指揮をとった薩摩藩も、
 長州には数名の処分者を出させただけで
 双方とも兵力を温存したまま、いわば談合で
 平和的に決着をつけておる。
 まんざら、あり得ない話でもなかろう」



 「薩摩が、寝返るということですか」


 「いやいや、これはあくまでも、
 例えばの話である。、
 戦力の増強は会津にとっても必須の課題。
 それともうひとつ、
 これも八重に届けてもらいたい。」



 山本が懐より、二通の書状を取り出しました、
さらに、腰の小刀もそれに添えました。



 「蛤ご門の時に、覚悟を決めた折、
 八重にしたためたものである。
 幸いにして、怪我をする前のことであり、
 これが最後の直筆となってしまいました。
 一通は母上に、もう一通は八重に、それぞれにしたためました。
 届けていただけるかな、山本覚馬のこの気持ちを会津まで。
 琴殿。」


 「そういうことであれば、是非にでも。
 承知いたしました、
 命に賭けても、まっとういたしまする。」



 「さすが。
 噂に高い、法神翁の愛弟子ぶり。」


 「師を、ご存じなのですか」



 「昔、江戸にて教えを請うたことが有りました。
 いやはや、赤子同然の弟子で、
 師にずいぶんとしごかれました。」

 懐かしい名前に、琴の頬が緩みました。
故郷・上州を旅立ち以来はや二年余り
思いがけない恩師の名前との再開でした。
不思議な縁(えにし)のなかで、琴はまだ見ぬ覚馬の妹、
会津の八重に、しばしの想いをはせていました。