舞うが如く 第四章 7~9
通されたのは、木の香も鮮烈に香る
完成したばかりの、高い天井を持つ謁見所でした。
待つほどもなく、若侍にを片手に引かれて、山本覚馬があらわれました。
思いのほかに小柄で、すでに両目は閉ざされていました。
「長崎で診てもらいましたが、
すでに手遅れであるとの見立てにありました。
今はこの者が、わしの眼の代わりにござる。」
着席するとともに、新式の西洋銃が差し出されました
見えぬはずの目で、山本覚馬が琴に向かって身を乗り出します。
「なるほど、噂にたがわぬ美剣士にある。
我が妹、八重(やえ)と同じ匂いが漂よいまする。
しかし沖田殿、
このお方も、なかなかに気丈であろう。」
琴が苦笑しながら、沖田を覗います。
沖田は横をむいたまま、会話に介入するそぶりすら見せません。
「これは、失礼をした、
頼み事と言うのは、この新式の連発銃のことである。
これを、会津の八重に届けてほしい。
このご時世です、どこで襲われるかもわからぬゆえ、
偽装はいたしますが、これ見よがしに警護を付けるわけにもいかぬ。
そこで新撰組いち腕が立つとという、
琴殿に白羽の矢を立てたという次第である、
引き受けてくれるかの。」
「新式の西洋銃ですか」
「左様、これが、これからの会津鉄砲隊の新装備になる。、
数百丁もの護衛となるが、いかがかな?」
断る術もなく返事に困る琴に、
さらに山本が言葉を続けました。
作品名:舞うが如く 第四章 7~9 作家名:落合順平