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舞うが如く 第四章 7~9

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舞うが如く 第四章
(8)会津へ



 山南敬介の切腹から間もなくのことでした。
この年の春に、年号が「慶応」に改まりました。
不祥事や争い事の絶えない時勢を考慮して、幕府が朝廷に打診をしてから
改元をしたという、前代未聞の出来事です。
また同時にこれが、江戸幕府の最後の年号となりました。


 これを前後するように、
ふたたび江戸では新撰組による隊士の募集が行われ、
土方や伊籐たちの奔走もあり、
50名を越える隊士が集まり上洛をします。
また手狭となった壬生の屯所から、かねてからの計画通り、
西本願寺に、新撰組の拠点が移されました


しかしこのころから、
沖田の病状が、ぶり返しはじめます。
公務中の総司は、勤めて快活にふるまい、
かえって周囲を困惑させるほどのあり様でした。



 「総司には、
 よほど山南の死がこたえたのであろう、
 そこまで気丈に振るまわらぬとも、
 良いものを・・・」



 土方が、ため息をもらしました。
総司に堅く口止めされている琴には、返す言葉がありません。
深夜の、乾いた咳には鮮血も混じることがありました。
それでも総司は苦笑いをしたまま、布団の上に正座しては、
症状がおさまるのをじっと待ち続けているのです。
そんな隣室の気配を聴くたびに、琴は胸がいたみ、
眠れない夜になってしまいます。